平穏は土地の開発業者によって毀損される。抵抗する2人。雨粒、水、土、草木が混沌をもたらす終末的世界に、手のぬくもりが一条の光となる読後感は、ホラー的恐怖を越えてさわやかでエモーショナルな感慨を呼ぶだろう。

 ホラーという枠組みには納まらない全4編の味わいは、著者の今後をいやがうえにも期待させる。韓国文学の奥の深さに、本作からはまるのもよさそうだ。

Cho Yeeun/作家。2016年に短篇「オーバーラップナイフ、ナイフ」で黄金の枝タイムリープ公募展で優秀賞を受賞し、作家デビュー。また、当該作が収録された本書は韓国で10万部突破のベストセラーとなる。著書に『ニューソウルパーク ゼリー売りの大虐殺』『テディベアは死なない』『トロピカル・ナイト』(いずれも未邦訳)など。
 

えなみあみこ/1975年、大阪府生まれ。ライター、書評家、京都芸術大学文芸表現学科准教授。共著に『韓国文学を旅する60章』。

カクテル、ラブ、ゾンビ

定価 1,760円(税込)
かんき出版
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2024.11.10(日)
文=江南亜美子