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なぜテレビ業界でハラスメントが起きるのか
――「女にテレビは作れない」と性差別をして、女性にとって働くのが厳しい環境にしておきながら、「女だから得したんだろう」と“女子ボーナス”があると思っているというのは男性側に矛盾がありますよね。
多分、男性たちには「自分たちは頑張って働いてるのに、お前らは楽してる」って感覚があるんだと思います。それも深いことではなくて、「こっちは夜遅くまで大変な仕事をしているのに、女はチヤホヤされて『もう帰っていいよ』とか言われやがって」みたいなレベルのことなんですよ、多分。女というだけでそう思われるハンデがあるんだってことは未だに感じます。「なんでそんなに女が嫌いなの?」と思いますね。
そもそも、この業界は競争意識が強すぎるんです。それはすごく問題だと思いますね。視聴率を獲ることや企画が通ることが“実力”の証だとみんな考えていて、そこで切磋琢磨してるつもりになっている。企画が通るかなんてわりと運次第だし、「あんまり気にするなよ」って私は思うんだけど、それが「テレビを作るクリエイターとしての才能」みたいな評価につながっちゃう。
「結果出せよ」って言葉もよく出てきますね。「◯◯賞を獲りました」「企画が通りました」とか、“結果”がないと声を聞いてもらえない。
――そうなると、何か異を唱えたいことがあっても「結果を出していない自分が言える立場じゃない」と思ってしまうこともありそうですね。
そうなんです。これは私が女性だからじゃなくて、男同士でもそう。その中に女性という異分子が入り込んできたら、当たりが余計にキツくなるっていうだけで。
だから男同士でもハラスメントは存在します。私、男の人から相談受けますもん。「僕、若い子にどうしても怒っちゃうんです。どうしたら怒らずに仕事できるんでしょうか」って泣きながら言われたことがあって。「私に言うなよ」って感じですよ。
――『Wの悲喜劇』に出演されてセクハラやパワハラについて積極的に発信されるようになって、会社内では変化はありましたか?
全然ですよ!(笑)
――プロデューサーとしてキャリアも積まれているわけで、会社を辞めてフリーランスになる選択肢は考えなかったのでしょうか。
ありましたよ。だけど、悔しいじゃないですか。悪いことをしたわけでもないのに、なんで私のほうが辞めなきゃいけないのか。
それに、辞めるのはいつでもできるんで、おじさんと張り合える力がついたんだったら、おじさんに勝つまで会社にいてやろう、って今は思ってます。こういう勝負って本当に時間がかかるんです。「女にテレビは作れない」って言われて「そんなことありません」って対等に言えるようになるまで20年もかかっちゃった。バカみたいですよね。
でも、この勝負をするために私はこの会社に入ったかもしれないと思うところもあるんです。だから、やれるところまでやろうかな、って。
2024.11.07(木)
文=斎藤 岬
写真=杉山拓也