「ディープUVA」に
「近赤外線」のカットが始まる
(2)UVAの中でももっとも波長が長く、日焼け止めで防ぎにくかった光線を、富士フイルムは「Deep UVA」(370~400nm)、ランコムは「ロングUVA」(340~400nm)と名付けた。
(3)「近赤外線」は紫外線より遅いタイミングで真皮の深層部まで届き、シワやたるみなど肌の老化を促進することをポーラが発見した。
“平成”に入ってから、もっとも進化したもののひとつに、“UVケア”がある。思えば30年前の“日焼け止め”はひどくのびが悪く、思い切り“白浮き”してしまうようなお粗末なものだった。SPF値も怪しいもので、テクスチャーの未熟さのせいもあって、SPFが30あってもムラ焼けすることが少なくなかった。SPF値競争となると、オークション的に数字が上がって、最終的にSPF200という猛者も現れ、もうキリがなくなった。そこで世界的に最高値は50までと決められてしまう。
だから次はテクスチャー。“白浮きしない”、“化粧のりもいい”、“崩れない”を競うことで、ベースとしてのめざましい進化を遂げたのだ。その一方で、SPF値は肌を黒くし、シミ、ソバカスの原因となるUVBを防ぐ数値にすぎなかったことが明らかにされる。同時により肌の深くまで入っていって、シワやたるみなどの老化をもたらすUVAまでを防ぐ数値としてPA+が採用され、最高値はPA++++と設定されたのだ。
一昨年あたりから、そこにBBクリームやCCクリームの“ファンデ効果”が搭載されたが、UVケアは昨年来、また光の守備範囲を広げている。それもスキンケアで今、飛ぶ鳥を落とす勢いの3ブランドが、こぞって“光の新しいターゲット”をぶち上げたのだ。
2 肌の深部へ届きシミやシワを誘発する波長の長いUVA(370~400nm)を遮断する技術を、世界で初めて開発。 アスタリフト パーフェクトUVプロテクター SPF50+・PA++++ 30g 3,800円/富士フイルム
3 紫外線のみならず、肌深部に届く“近赤外線”をカットしながら、スキンケア成分の力で肌の内側からもケア。 B.A ザ プロテクターS SPF50・PA++++ 45g 11,000円/ポーラ
ランコムは、UVAのうち、地表に届くUVの75%を占める、より波長の長い“ロングUVA”をターゲットに。これは波長340~400nmというもので、今までのUVケアでは防げなかった光。実は富士フイルムのアスタリフトも同じ。UVAの特に波長の長い370~400nmをディープUVAとして、これを防ぐ新技術を採用している。30nmの差はあるものの、従来のUVケアが追い切れない“より長い波長の光”を防げるようになったという点で、この2ブランドがUVケアの最先端に立ったのは確か。
もう一ブランド、“新しい光”を見つけたのが、ポーラである。こちらは紫外線ではなく、“近赤外線”。一般的に地球を温めてくれる赤外線は、2500~2万5000nm。家電にも使われる遠赤外線は2万5000nm以上で、ポーラが問題にしたのは760~1400nmまでの光。まさに“UVケア”の新しいターゲットと言えるだろう。これは真皮のもっとも奥深くまで届き、UVAよりもゆっくりコラーゲン分解酵素をつくってしまうことで、シワ、たるみの原因をつくっていく。
ともかく新しい敵を見つけたからには新しいUVケアを。UVケアは、いよいよ完成に近づいてきた。
齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数
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2014.04.19(土)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫