春が来た。上野公園、千鳥ヶ淵、靖国神社、飛鳥山、小石川後楽園、井の頭公園、昭和記念公園……、こう地名を並べるだけで浮き立つような春の気分が感じられる花見の名所。今回訪れた中目黒ブックセンターの近くを流れる目黒川は、花見スポットとして不動の人気を確立しつつあるエリアだ。

 川にフタをして遊歩道などにする暗渠化が進んだ都市河川が多い中で、池尻大橋から不動前までは、水量豊かな目黒川と、両岸の桜並木が美しく絵になる。行政も住民もバックアップして観光資源化を進めていることもあって(めぐろ観光まちづくり協会(外部サイト))、ガイドマップも用意され、誘導の警備員も配して、万全の花見体制が整っていた。

目黒川の桜、取材時は三分咲き。

 目黒川から山手通りを渡って駅の方に向かう、代官山からつながる瀟洒なエリアとは少し対照的に、庶民的なエリアのパチスロ屋さんの2階に中目黒ブックセンターはある。やや目立たない入り口だが、ちょっとのぞくと本のランキングやオススメ本、地元特集雑誌のポスターなどが並び、品揃え充実の本屋さんを予感させる。この日は、本屋大賞発表直前、ノミネート本をディスプレイしていた。いわゆるチェーン店ではなく、地元の店舗だが、10万冊の品揃えをうたった頼れる街の本屋さんだ。

中目黒ブックセンター。2階の店舗への入り口は、ちょっと目立たない。

 文庫・文芸担当の佐藤亜希子さんによると、昼間は地元の方や近隣の会社員の方、夕方は学生さん、夜は会社帰りの方と、時間帯によって様々なお客様が訪れる。お花見の時期はそれとわかる華やいだ雰囲気の方も多いけれど、普段は常連のお客様が多いとのこと。

階段のディスプレイで、オススメ本をプッシュ。

 品揃えはしっかりしていて、地元のガイドブックも映像化された作品も話題作も展開しており、売れる本をきっちり売っている(取材時、映画化で話題の『白ゆき姫殺人事件』や『魔女の宅急便』、『笑っていいとも!』の終了で話題のタモリ本コーナーが目を引いた)。一方で、芥川賞・直木賞受賞作の文庫化フェアと本屋大賞受賞作文庫化フェアを併設し、本好きが見れば、「ああ、この本読んだな」、「これ、文庫化を待っていたんだよな」と思える手堅い展開だ。

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2014.04.12(土)
文・撮影=小寺律