CREAがはじめてひとり温泉を特集して7年。当時は「女性がひとりで温泉なんて!」と驚きを持って受け止められたこのテーマも、いつしか珍しくない光景となりました。
好評発売中の「CREA」2024年秋号では、コロナ禍を経て、進化する“温泉地”を舞台に、めぐる旅を大特集しています。
CREA 2024年秋号
『楽しいひとり温泉。』
定価980円
磨きぬかれた復活の名宿へ
●旅館万亭[和歌山/白浜温泉]

万葉集に「牟婁温湯(むろのゆ)」や「紀温湯(きのゆ)」の名前で登場し、日本三古湯の一つとして知られる、白浜温泉。関西屈指の人気ビーチである白良浜を囲むように多くの宿が立ち並ぶこの地で、ひときわ存在感を放っているのが、「旅館万亭」だ。

大正時代に建てられた数寄屋造りのこの宿は、京都・祇園の老舗茶屋「一力茶屋」の別荘を数寄屋建築の巨匠である平田雅哉が改築し、開業したという物語を持つ。
老朽化により長らく休業していたが、再開を望む地元の人たちの熱い声に応え、満を持して2023年夏に再オープンした。

巨匠の美意識が息づく、粋で懐かしい空間はそのままに、より快適に過ごせるようにと客室などをアップデート。時を重ねてもなお美しい床やガラス、そして調度品からは日々の細やかな手入れと愛が感じられ、心が温かくなってくる。
2024.11.03(日)
文=高田真莉絵
写真=岡本佳樹
CREA 2024年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。