私も今まで、朝ドラが始まるとモデルになった人について調べることがよくありました。するとお妾さんには触れていなかったり、国籍を変えていたり、エンタメの都合で変更している部分に気が付きます。その時の時代性もあることですし正解はない。制作陣が責任を持つ取捨選択ですが、モデルをどう描くかの問題ですよね。

 私も寅子に事実婚をさせたことが100点の答えだとは思っていません。今の私のベストを書きましたが、来年の自分は別の視点を持っているかもしれませんから。選択的夫婦別姓制度がなぜ未だに実現しないのか、私も本当に疑問ですが、ドラマをきっかけに議論していただけたらと思います。『虎に翼』を好きではないという方も、見続けてくださるだけでありがたいです。

――「血縁を前提とした家族という言葉はあまり好きではない」とも過去におっしゃっています。

吉田 本来は互いにリスペクトしあって、ケアしたりされたりするのが家族だと思います。あまりにも「親だから」「子どもだから」と、呪いのようになってしまうのが嫌なんです。

 私自身は今、小さい息子を育てていますが、母がとても助けてくれています。今までも忙しい日の平日の夕飯は母が作ってくれていましたが、朝ドラが始まってからは栄養バランスを考えた夕食を平日毎日作ってくれるんです。だから朝食は「バナナ2本がいい」と息子が言っても、それもいいか、と思えます。そういう意味での安心感がありますね。

 保育園のお迎えも「ばあばでもいい」と言ってくれて。お風呂は私か小学5年生の姪っ子としか入りません(笑)。執筆中に息子が熱を出して早引きすることもありましたが、家族の支えと息子の頑張りで、仕事ができています。

 

「全速力で頑張れ」という母の言葉

――SNSにもときどき、息子さんが登場しますね。

吉田 部屋に小さいプラネタリウムのようなライトをつけているのですが、「ぼくは星を見てるから、メールを見ていいよ」と言ってくれるんですよ。申し訳ない気持ちもありつつ、ありがたいです。

2024.09.26(木)
文=吉田恵里香