――小誌の特集は「パートナー」ですが、今作でも様々な形でのパートナーシップや、血縁関係に依らない「家族のようなもの」が描かれています。

吉田 異性同士の関係性が「恋愛ありき」にならないように気をつけていました。轟とよねは2人で弁護士事務所を始めますが、男女のカップルになる展開も考えられたでしょう。けれど、轟は自認していなくても同性が恋愛対象の人間と当初から決めていたので、恋愛関係にはなりません。ただパートナーではあることは間違いないし、家族のようなものだと描きたかったんです。

 LGBTQの問題については、寅子自身が当事者であれば、より問題を際立たせることができたかもしれません。しかし、三淵嘉子さんというモデルの方もいらっしゃいますし、寅子の目線は、マジョリティといいますか、世の人の言う「普通」のライフステージを歩ませた方がよいと思いました。社会のなかで女性が置かれる立場については、女子部の同級生だったよねや、華族の涼子様(桜井ユキ)、離婚と親権に悩む梅子さん(平岩紙)に託したところもあります。

 

モデルがいるドラマを書くときのポリシー

――モデルの三淵さんは法律婚をしていますが、寅子と航一(岡田将生)は事実婚を選択します。評伝ドラマと、実在の人物をモデルにしたドラマをどのように捉えて書いていますか。

吉田 モデルがいるドラマを書くにあたっては、モデルとなる方の根底の部分とずれがないか、を大切にしました。三淵さんは男女平等と女性の社会進出のために、様々な発言や行動をされました。三淵さんが問題だと思ったことがすべて解決していたら「当時はこうでした」と書けますが、未解決のまま70年近く過ぎています。

 寅子と航一を法律婚させるかどうかは、とても悩んだところです。主人公が語る言葉は正解に見えてしまうし、なにより寅子という人を描いてきて、佐田姓やそれまでの自分の実績を捨てることを幸福だと感じるタイプとは思えなかったんです。

2024.09.26(木)
文=吉田恵里香