ドラマ『チェリまほ』(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)は、出産前に書きあげて、出産後にオンエアだったので、放送中に感想を見ていましたがそれは例外で。『虎に翼』についてはありがたいことに、放送の初めの頃に、評判が良いとスタッフから教えていただいたので、視聴者の方を信じて書こうと決意を新たにできました。

 

Xで脚本の意図を投稿した理由

――大切なテーマを扱った回の後に、Xで意図を投稿されることもありました。轟(戸塚純貴)のセクシュアリティをめぐって、よね(土居志央梨)と話す51回の後の投稿は印象的でした。「私は、透明化されている人たちを描き続けたい」「こういうことを作家が書くことが嫌な人もいるだろうけど、言わなきゃいけないことは言わなきゃいけないんです。ごめんね!」という言葉に、ドラマの方向性を確信した視聴者も多かったと思います

吉田 社会の様々な問題にどう対処するのか、正解はないと思っています。けれど『虎に翼』では人権やLGBTQなどの問題を扱っているので、言わなくてはいけないことがあると思っていました。作品解釈は自由ですが、作品を巡ってSNSで差別的な発言があったときに黙っていると、その行為を肯定することになってしまいますから。

――『虎に翼』は主人公の個人としての成長と「法とは何か」という課題がシンクロしながら進みます。絶妙なシナリオをどのように作っていったのでしょう。

吉田 自分で調べた内容とスタッフからの資料を合わせて、まずプロットか初稿にする。それを考証の先生方に見ていただく流れで進めました。エンターテインメント作品をつくるときには、「事実をどこまで崩すか」という問題が出てきます。今回は朝ドラですし、なるべく事実に沿いたい気持ちが強かったので、史実を確認しながら書けたのは考証の先生方のおかげです。私が調べてきたものに対して、「でもこれは昭和◯年からの制度だからドラマに合わない」と指摘してくださったりと、良い経験でした。

2024.09.26(木)
文=吉田恵里香