そのメンバーたちの思い、大学関係者や、応援団の方々の思いをすべて背負って、箱根を走っているような感覚でした。

――出場された2回は、どちらも6区での出走でした。この区間を選んだのはなにか理由が?

川内 高校時代から、インターハイで表彰台に上っているような選手と夏合宿などをしていても、下り坂だったら負けないという自負があったんです。強豪大学に進学した先輩が合宿に顔を出してくれたときにも、下りだったら引けを取らない走りが出来た。

 箱根駅伝中継を真剣に見るようになったのは高校時代からですが、やっぱり見ていても、一番ワクワクするのは6区のスピード感でした。山下りだったら、自分のようにたいしてスピードがない選手でも、平地では出せないような速度で勝負できるんじゃないか、強豪校としっかり張り合えるんじゃないかという気持ちがありました。なので、怪我が治って記録が伸びて、学連選抜で出場できるというときには「やっぱり6区だ」というのはずっと思っていたんです。

 今では笑い話ですが、大学のOBたちからは10区を走ってほしいという話がありました。学習院で初めて出場する選手が10区を走れば、皇居の横を通るので、天皇陛下や皇族の方々が応援に出て来てくださるかもしれない、と(笑)。確かに出て来てくださったらすごいけど、たぶんそんなことはなかったでしょうね(笑)。

――箱根駅伝とメディアの関係というのも、『俺たちの箱根駅伝』の読みどころの一つです。様々な大会に出場されている川内さんから見て、箱根駅伝とその中継というのはやはり特別なところがありましたか?

 
 

川内 そうですね。なぜ中継で「小涌園前」とわざわざ名前を出すのかなどは知らないことだったので勉強になりました。あとは中継の際に、選手のエピソードを紹介されるところは、僕の経験にも重なることがあったので、ずっと忘れていた記憶が蘇りました。

 箱根駅伝とメディアの間で、失敗したなという経験もあります。3年生のとき、前年の初出場で区間6位という記録を出していたこともあり、予選会のときからカメラ1台が張り付いて取材してくださったのですが、ちょっと神経質になってしまったのか、乱れてしまい大失速したんです。もちろん他にも原因はありますが、集中力が保てなかったんですね。

『俺たちの箱根駅伝』では学生連合への取材の甘さが露呈する場面もありますが、僕の場合にはトイレに行くのさえカメラが付いてくるような徹底さだったので、そのあたりはちょっと違いますね。もしドラマ化される際には、僕の体験をお話しするのでぜひ取材してください(笑)。

後編へ続く)

俺たちの箱根駅伝 上

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2024.09.25(水)