〈パリで行われた夏季オリンピックやり投げで金メダルを勝ち取ったハルカ・キタグチは、プラハの空港から、喜びに満ちた人々の待つドマジュリツェ市の広場に直接駆けつけた。
「みなさん来てくださってありがとうございます。ホツコのお祭りに参加できなくてとっても残念でしたが、パリからとてもすてきな金色のメダルを持ってきました」〉
8月12日、第二の故郷・チェコに戻ってきた北口榛花の第一声を、地元紙ドマジュリツキー・デニークが伝えた。昨年秋、ブダペストの世界選手権から帰った時と同じように、どこよりも早くこの街で彼女の優勝祝賀会が行われ、その勇姿と金メダルをこの目で見ようと広場には大勢の人々が集まった。
伝統のお祭りと北口の金メダル、Wで盛り上がるドマジュリツェ市
北口が師事するダヴィト・セケラークのチームの拠点であるドマジュリツェ市は、チェコの西ボヘミアにある人口1万人ほどの街だ。ドイツ国境まで10kmほど、ホツコ(Chodsko)と呼ばれる豊かなフォークロア文化を保持する地方の中心都市でもある。
女子やり投げ決勝の行われたその日、ドマジュリツェでは今年で第70回目の記念となるホツコ地方の伝統的なお祭りの日でもあった。人々はお酒を片手に伝統的なフォークロアのステージを楽しんだだけでなく、今年はカフェのスクリーンに五輪のやり投げの中継が映し出され、市長と副市長も観戦するなど、8月のこの週末はホツコのお祭りと北口の金メダルでドマジュリツェはずっとお祝いの空気に満ちていた。
北口榛花の金メダル獲得は、チェコ国内のメディアでも華々しく伝えられた。スポーツニュース専門サイトのiSport.czでは「チェコ選手が獲得した5つのメダルに加えて、もう一つの金メダルがパリからチェコにやってくる」と歓迎し、二人を追い続けたミハル・オソバ記者は「チェコ人コーチが日本人をオリンピック金メダルへと導いた」と絶賛した。
2024.08.30(金)
文=梶原初映