この記事の連載
●心に響くセリフが生まれるわけは……
――毎回、ズシンとくる名言があるなぁと思って読んでいます。意識して作っているのでしょうか。
谷口 名言!? それは意識してなかったです。話を考えるとき、どのキャラクターにどんな行動をとってほしいかを箇条書きにして、そこに至るまでの自然な道筋を考えながらセリフを作っています。
――特に印象的だったのは、渚の「そうやって 楽しいって感じたことが『自分らしさ』なんじゃない?」というセリフです。
谷口 「自分らしく」と言われても、よくわからない人が多いかなと。
――勝男の「俺は変わる 鮎美に捨てられた俺から! だが何を変えたらいいんだ?」も、ある意味名言かと。本質を突いたセリフが多く、1話ごとの情報量が多いですね。
谷口 もともと海外ドラマなど1話完結だけど続きもののオムニバスが好きなので、自然とその影響を受けているかもしれません。本作では編集さんに「連載作ならではの引きを作ってほしい」と言われたので、毎回がんばってます。読み進めてもらうには大切なことなんだなぁと、気づけてよかったです。
――話がどんどん進展していく小気味よいスピード感も、谷口作品の特徴だと思います。
谷口 そこは意識してきたかも。テンポを大事にしようと思って描いてますね。私はデビュー当時、暗いマンガを描いていて、担当編集さんに「もっと明るく、明るく」とよく言われていたんです。それで、主人公が長々と落ち込むような場面をカットしていった影響はあるかもしれません。映画も参考にしているかな。映画でいえば分数、マンガでいえばページ数は限られているので、必要に思えるシーンでも、それがあることで間延びしていないか考えています。
谷口菜津子(たにぐち・なつこ)さん
神奈川県出身。Web、情報誌、コミック誌等で活動。『教室の片隅で青春がはじまる』(KADOKAWA)、『今夜すきやきだよ』(新潮社)では、多様性を柔らかな筆致で描いたことに対し、第26回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。現在、comicタント(ぶんか社)にて『じゃああんたが作ってみろよ』、webアクション(双葉社)にて『まめとむぎ』を連載中。
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
谷口菜津子 ぶんか社 各880円 既刊2巻
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文=粟生こずえ
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