世の中に溢れている猫をテーマにした音楽。作家の町田康さんに忘れられない3曲を選んでいただきました。(「CREA」2024年夏号より一部抜粋)


猫の手触りを感じる楽曲の数

 世の中に溢れている、猫をテーマにした楽曲。気まぐれな恋人を猫に喩えたり、猫の凜とした振る舞いに、自由に生きたいと願いを込めたり。猫が好きな人もそうでない人も、「猫と音楽」で思い浮かぶ曲や歌詞があるだろう。曲のなかの実体のない猫の存在感が、その音楽を聴く人の心にしっかりと爪痕を残すさまは、これもまた捉えどころのない猫の魅力の一つなのかもしれない。

 作家の町田 康さんは、猫と音楽作品の魅力の一端をこう言い表した。

「猫を歌詞に出すのは難しいと考えます。なぜならどのような言葉も実際の猫は通り過ぎてスタスタ行ってしまうからです。

 しかし曲となると猫を、猫の手触りを感じる曲はあります。ネコ、という言葉を其の儘、使っていない方が響くと思います」

 町田さんはこれまで20匹以上の保護猫と生活をともにした愛猫家で、猫との日々を4冊のエッセイにまとめている。

 猫と暮らす魅力を著書『猫にかまけて』のなかで「どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた」と記した町田さん。町田さんにとって忘れられない「猫と音楽」を伺った。

2024.08.27(火)
写真=末永裕樹
イラスト=Caffeine House

CREA 2024年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

猫のいる毎日は。

CREA 2024年夏号

猫のいる毎日は。

定価950円

人生に大切なことを猫は全部知っています。過去や未来ではなく、いまを生きること。必要なときに食べ、好きなときに眠ること。人に気を使いすぎないこと――。そう、猫は最高! それにしても、私たちはなぜこんなにも、この不思議な生き物に魅了されてしまうのでしょうか。1998年に日本の女性誌ではじめて「猫」を特集し、パイオニアだったCREAが、終わらない猫ブームが続くいま、12年ぶりに、猫と人との幸せな関係を紐解きます。