ファッションモデルの経験もあり、抜群のスタイルで何でも素敵に着こなす上杉柊平さん。俳優としては次々と話題作に出演し、役のそれぞれの個性を見事に表現している。そんな上杉さんが次に挑むのは、人気漫画原作の超常ミステリードラマ『七夕の国』。選ばれし者が与えられた不思議な能力を持つ男、東丸高志をどんな心境で演じていたのだろうか。
閉塞的な社会や環境で生きることを考える
――『七夕の国』原作との出会いと、作品に対してどのような印象をお持ちですか?
最初に読んだのは子どもの頃でした。この作品のお話をいただいたタイミングで購入して読み直してみて、改めて感じたことや気づいたことがいろいろとありました。
例えば作品にでてくる“触れた物すべてをエグる黒い球体”というエネルギーのようなものは、物語のなかで象徴的な意味を持っていますが、この球体は比喩の一例であって、今の時代であれば、脳でも、スマホでも、使い方次第で何にでも置き換えることができると思いました。
そして僕がこの作品で惹かれたのは、舞台となっている閉塞的な村やその村に今も残っている伝統行事。八百万の神様を自然と受け容れている“丸神の里”のような町や村が、“変化”というものを好まないことを、細田佳央太さんが演じるナン丸の視点を通して客観的に見せていますが、我々にも丸神の里の人間のような部分があるのではないかということを感じた作品でした。
――東丸高志という役をどのように捉えて、どのように役を膨らませていきましたか?
東丸高志は、ただ愛されたくて、ただ認められたいだけのかわいそうな奴。その経験がないままに育ってしまって、欲求不満の吐き出し方が他の人とは異なっていただけだと、僕はずっと思っていました。だから自分が演じる上では、「悪い奴」というより「悲しい奴」だと解釈して、東丸高志という人物の土台を作っていきました。
――主人公の南丸洋二(ナン丸)を演じた細田佳央太さんについて、共演したことで気づいたことはありましたか?
僕は細田さんのことが一方的に好きで、共演するのをとても楽しみにしていました。ご一緒するシーンも多かったので、目の前で細田さんとたくさんお芝居ができて楽しかったですし、僕が演じる東丸高志が、細田さんが演じるナン丸を振り回していくことが多い中で、振り回されているナン丸が魅力的で、愛らしい存在だなとすごく感じていました。
撮影の合間に会話させていただく機会もあり、趣味などの話をしたこともありましたが、役としての関係性があったので、あえて必要以上の会話はしないようにしていたように思います。
細田さんに対する先入観みたいなものはなかったのですが、実際にお目にかかってみると、芯が太くてドシッとされている方という印象で、大きく見えました。僕が怒って細田さんに詰め寄るシーンがありますが、テスト撮影のときに、彼に詰め寄って掴みかかると、しっかりとした体つきで全然びくともしないんです。思わず「胸板が厚いんだね!」って、言った記憶があります(笑)。
もし超能力を得られるとしたら…
――上杉さん演じる東丸高志は「窓の外に手が届く」と呼ばれる●(まる)を作り出す能力を持ちますが、もし上杉さんが何か超能力を得ることができるとしたら、どんなことができる能力を望みますか?
瞬間移動とか、空を飛ぶとか、あったらいいなと思う超能力はたくさんありますが……髪の毛を自在に伸ばしたり、短くしたりする能力が欲しい!(笑)
例えばジョニー・デップの映画を観て、彼のロン毛がかっこいいなと思ったら伸ばしたくなるし、映画『トレインスポッティング』を観たら、坊主になってしまいたくなる。どうしてもお仕事の関係で、自由に髪を短くしたり,伸ばしたりできないことがあるので、「今日は伸ばしたい!」と思ったときに、その超能力があったらいいですね。あとは足にタイヤが生えて僕自身が車になるのもいいな。“カーズ”になって風を感じてみたいです(笑)。
――『七夕の国』の見どころを教えてください。
この作品を観たときに、主人公のナン丸と同じ視点で、丸神の里のことを“ヤバイ”と思う人は多いと思います。実は作品を通じて、この日本という島自体が“丸神の里”なのではないか、という問いかけが描かれているのではないでしょうか。
外のものが怖くて、変わることが嫌で、ずっと同じ事を守り続けている。伝統を守ることはいいことだけど、それでは変われない……そういうことに気がつけるのも、この『七夕の国』の魅力かもしれません。
海外の視点からどのように見えるのかも興味深いですね。もしかすると、少し不気味なものに映るかもしれない。どんなレビューが来るのかも楽しみです。
2024.08.01(木)
文=山下シオン
写真=平松市聖
ヘア&メイク=kazuma kimura(skavgti)
スタイリング=RIKU OSHIMA