――役を演じるうえで、監督からはどのような演出を受けたのでしょうか?

門脇 撮影現場に入る以前に、役の背景について説明されたお手紙を監督からいただきました。それと実際の現場で大きな助けとなったのは衣装とメイク。彼女のあの出立ちは、私には武装にしか見えなかった。

 あんなにしっかりと化粧をし、あれほど綺麗な衣服を身につけながら、ただただ寂しくて、孤独で。初めてメイクをして鏡の中の自分を見たとき、ああこの人はなんて悲しいんだろうって思いました。

シャオ この映画は台湾の金馬奨で多くの賞をもらいましたが、街並みやセット、メイクや衣装まで、時代考証をしっかりしていたことも大きかったかなと思います。

毎回温かい撮影現場の食事

――台湾映画の現場はいかがでしたか?

門脇 スケジュールにとても余裕があることに驚きました。1日に撮るのは2シーン程度。ご飯の時間には毎回温かいお食事がいただけるのが本当に嬉しかったです。差し入れも豪華で、北京ダックが丸々1羽届いたこともありました。

シャオ 台湾では、どの現場でも冷めたお弁当は出さないはずです。日本の現場で冷たいお弁当を食べるのは、お寿司を食べる文化だから?

門脇 いえ、単に冷めてしまっただけです(笑)。

完全に両極化している現在の台湾映画

――本作のプロデュースを務めたホウ・シャオシェン監督をはじめ、台湾ニューシネマの時代(80~90年代)の映画は日本でいまも人気ですが、近年は、新しい世代の監督たちの映画も注目を集めています。シャオ監督は、台湾映画の現状をどうお考えですか?

シャオ 現在は完全に両極化している印象があります。ハリウッドや韓国に匹敵するジャンル映画を志す人がいる一方で、自分のルーツや文化にこだわり、台湾映画をつくるんだという意識を強く持つ人たちもいる。

 とはいえ両極化は決して悪いことではないと思う。いろんな映画を撮る人が出てくるのは望ましい状況ですから。

2024.06.30(日)
文=月永理絵