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帰りのバスの時間に注意

 筆者が世界各国のパンダを見てきたなかで、最も長く並んだ時間は4時間。上野動物園でのシャンシャンの観覧で経験しました。フーバオはそれに匹敵します。フーバオの公開終了直前という特殊事情もあるかもしれませんが(シャンシャンの公開終了直前は抽選で人数を絞った)、エバーランドは交通の便が良くないことや入場料が高いことなどを踏まえると、大変な人気だと言えます。

 エバーランドは、ソウル近郊の龍仁市に位置します。ソウルの人気エリアの江南からバスで約40分、運賃は片道300円ほどです。バスは高速道路を走るので、渋滞にほとんど巻き込まれません。ただし帰路は遅い時刻になると、なかなか乗車できない恐れがあります。筆者は2月28日(水)午後7時過ぎにエバーランドを出たら、江南行きのバス乗り場が大混雑で、1時間以上並ぶ羽目になりました。

 日本人観光客の多い明洞や東大門とエバーランドを結ぶバスも運行しています。こちらは予約が必要で、複数の日本語サイトからも予約可能。運賃は往復で1,500円ほどです。

 エバーランドはアトラクションもあるテーマパークなので、入場料は高め。1日の入場券の場合、公式サイトでは時期によって4種類の料金があり、大人一般が46,000~68,000ウォン(約5,000~約7,500円)。旅行予約サイトなどでは、もっと安く買えることが多いです。このほか半年や1年などの期間に何度でも入れるパスポートもあります。3日間通った筆者の場合3カ月間のパスポートが1番お得だったのでそれを買いました。

コロナ禍に動画で全国的な人気に

 韓国は1994年9月に中国から2頭のパンダ、ミンミン(明明)とリリ(莉莉)を受け入れました。しかし1997年に発生したアジア通貨危機でパンダにかかる費用が重荷になったため、後に中国へ2頭を戻しました。再び韓国にパンダが来たのは2016年3月。このパンダがフーバオの両親のアイバオ(愛宝)とロバオ(楽宝)です。

 筆者が2016年12月27日にエバーランドへ行くと、アイバオとロバオを観覧できたものの、パンダ館は閑散としていました。それがフーバオの誕生を機に様変わりしました。

 エバーランドによると、フーバオが2021年1月4日に一般公開されてから、今年3月3日の最終公開までの1155日間にパンダ館を訪れた人は約550万人。昨年1年間のパンダ館の訪問者は215万人で、フーバオ公開前だった2020年の107万人の倍です。

 人気の背景には、フーバオの愛らしさに加え、エバーランドの巧みなプロモーションもあると考えられます。

 エバーランドが運営するYouTubeチャンネルにアップされたフーバオの動画の総再生数は5億回に上ります。特に、フーバオが飼育員のカンさんの足にしがみついて、遊んでほしいとせがむような素振りを見せる動画は1600万回の再生を記録。コロナ禍で外出がままならないなか、韓国全土でのフーバオの人気につながりました。公式のパンダグッズも2016年当時と一変し、魅力的なものを次々と投入。フーバオのグッズは330万個ほど売れたとのことです。

 エバーランドはマクドナルドともコラボしていて、同園のパンダのイラストの焼き印が入ったハンバーガーが5月に韓国で発売。韓国の化粧品会社アモーレパシフィックのブランド「ラネージュ」ともコラボし、聖水洞(ソンスドン)に期間限定のポップアップストアがオープン。ケースにパンダをあしらったクッションファンデーションやパフが発売されました。

 現在、エバーランドではアイバオとロバオ、双子のルイバオ(叡宝)・フイバオ(輝宝)の4頭のパンダを観覧できます。双子も大人気。エバーランドによると、同園が運営するチャンネルで初めて映像をアップした昨年7月から今年5月までの10カ月間の総再生数は2億回を超えたそうです。

 入場方法など戸惑うこともありますが、日本から比較的行きやすい韓国で、異国のパンダ観覧を体験してみるのもいいかもしれません。

中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

パンダワールド We love PANDA

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2024.06.05(水)
文・撮影=中川美帆