嵐山では、染井吉野や枝垂桜など約1500本の桜があり、渡月橋の上や、桂川の両岸、さらには屋形船の上からと、様々な角度で桜の景色を楽しむことができます。さすが平安貴族のリゾートと思いますが、実は平安時代の嵐山には桜の樹はなかったそうです。
鎌倉時代中期になって、後嵯峨上皇が亀山殿(後の天竜寺)造営の折に吉野から数千本もの桜を移植したことからはじまっています。その後も僧侶で作庭家の夢窓疎石が計画的に桜を植えて、いかにも自然な豊かな桜の山がつくられました。鎌倉時代中期から室町時代にかけて嵐山の景観が確立されたようです。
明治時代には岩倉具視によって嵐山の保全会が組織され、植樹に尽力し今日に至っています。
青年時代の周恩来が、雨に煙った嵐山の桜を見て感動し詩を歌ったことも有名です。亀山公園に入ってすぐの所に歌碑があります。
見どころですが、渡来人の秦氏の手による人工島とされる中ノ島は、枝垂桜や染井吉野の一番の密集地帯です。対岸の渡月橋左岸やや下流からレンズを向けると、よい写真が撮れるでしょう。いかに手前の桜と渡月橋を配置するかで写真が決まります。
時間と体力が許せば、ぜひ登っていただきたいのが桂川左岸にある亀山です。展望台や休憩所が整備された丘陵で、ここから見る対岸の嵐山は、まるでパッチワークです。亀山には花見しながら川べりから入り、竹林の小道を降りるとさまざまな景色が楽しめます。撮影する場合は、下に保津峡を入れ広く下向きに撮影するか、嵐山を画面全体に入れるとよいでしょう。
嵐山は桜の満開時期が短い印象があります。それだけにピーク時には一斉に咲いた桜にうずもれるような美しさがあります。昨年の水害から必死に立ち直り、元気に再開された中ノ島の料理屋さんや旅館を応援してあげてください。
嵐山へのアクセス
交通手段 JR「嵯峨嵐山」駅下車。嵐電「嵐山」駅下車。阪急「嵐山」駅下車。市バス・京都バス「嵐山」下車。
小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。
2014.03.12(水)
文・撮影=小林禎弘