北野天満宮が梅の神社なら、そのすぐ北西角にある平野神社は古くから桜の神社です。平安京遷都の際、平城京からこの地に遷座され、歴代の天皇が何度も行幸されています。あまり知られていませんが、「皇大御神(すめおおみかみ)」と呼称され、伊勢神宮と同じ扱いをされています。

 平安時代中期に花山天皇が境内に数千本の桜を植えられたり、貴族がこぞって桜を奉納したので桜の名所になりました。現在では約60種400本あり、珍種が多く、色も形も時期も早咲き遅咲きとバラエティーに富んでいます。円山公園の枝垂桜の原木も残っていたり、平安神宮の枝垂桜もここからの苗を移したものといわれています。境内南東にある「桜園」は桜の植物園のようです。

 桜の時期、正門である東神門から入るのと、南西にある南門から入るのとではまるで印象が違います。東神門からは朱塗りの大鳥居をくぐると灯籠と桜に囲まれた参道が楼門まで伸びており、人は多いけれども落ちついた雰囲気です。南門から一歩境内に入ると桜茶屋が何軒か出店しており、朱の日傘がひろげられ、所狭しと朱もうせんの床几が出され、京都ではあまりない花見の風景が見られます。

 撮影する場合は、散漫な写真にならないように注意。傘に散った桜花や、裏から見たそのシルエット、幕とその上の桜、桜の中にある灯籠のならびなど、テーマを絞るとよいでしょう。

 毎年4月10日には桜花祭が催され、昔の衣装をまとった人たちの神幸列が出て町内を巡行します。

平野神社へのアクセス
交通手段 京福電鉄「北野白梅町」駅下車。市バス「衣笠校前」下車。

小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。

 

2014.03.10(月)
文・撮影=小林禎弘