東山の高台寺は、豊臣秀吉の菩提を弔うために正室の北政所(ねね)が建立した寺です。その西側に面したねねの道は、歴史ある京都のなかではまだ新しい桜の名所と言えるでしょう。

 この通りの電線地中化工事が終わったのは平成10年(1998年)のこと。2500枚ともいわれる石畳が敷き詰められ、北政所がこの地で19年余生を過ごしたことにちなんで「ねねの道」と名付けられました。土塀が広がり、美しい石畳の道と桜並木が重なって、いかにも古都らしい風景になりました。

 桜越しに見える八坂の塔も、電柱電線に邪魔されることなくすっきりした姿を見せています。桜も塔もライトアップされており、夜空とのコントラストが見事です。

 桜は高台寺公園とねねの道を仕切るように並木を作っています。少し高台の高台寺公園から見下ろすのもよいでしょう。石塀小路を西に入って東を向くと、両側に板塀、真ん中に石塀小路の灯篭、その奥に桜といった写真が撮れます。石塀小路には桜はありませんが、京都らしい曲がりくねった路地に茶店や料理屋が点在し、片泊まりの宿として人気の「田舎亭」などがあります。

 宿は、ねねの道沿いにある「力彌」もお勧めです。いかにも京都の宿の雰囲気が満喫できます。

 高台寺はかつて非公開寺院でしたが、今では毎年違った趣向を凝らした桜のライトアップで有名です。また、桜開花前の3月14日~3月23日には高台寺公園を拠点として寺院や街並みのライトアップやイベントを組み合わせた「京都・東山花灯路」が行われます。

ねねの道へのアクセス
交通手段 市バス「東山安井」下車。

小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。

2014.03.05(水)
文・撮影=小林禎弘