草彅 よくそう言われるんですけど、僕は常に怒(いか)ってますね。最近だと寝起きに片方のまぶたが重たくて「なんで俺のまぶた、開かないんだ!」とかね。本当に細かいことですごく怒ってる。時間が経つだけで「もうこんなに過ぎちゃったの?」ってイライラしちゃうくらい。ベースが怒りだから、かえってフラットに見えているんじゃないかな。
―― ものすごく意外です。
草彅 僕は怒りに対してとても敏感なんでしょうね。でもね、みんな気づいていないだけで、人って誰しも絶対怒ってると思うの。それをエネルギーに変えて生きているわけだから。
例えば僕は10年以上ギターを弾いていて、ステージでも発表しているんだけど、未だにFを押さえられないんですよ。それどころかGも難しくてさ。Gだよ? もう「くぅ~!なんでだよ!俺10年もやってんのにどういうことだ‼」ってヒジョーにイライラする。でもその怒りが根底にあるから、練習を続けられている。「俺はいつか押さえてやる!」って燃えるんだよね。
タモリに「向上心がない」と言われて…
―― 「こうなりたい」という向上心があるからこそ、怒りが湧いてくる?
草彅 そうそう、そういう感じ。私はね、タモリさんに「お前は向上心がない人間だ」ってよく言われるんですよ(笑)。でも実はあるんですよ、私。じゃないとこんなエネルギーは出てこないですよ。
―― 格之進も怒りを原動力に、まるで命を燃やすように宿敵を追い求めますよね。無実の罪をかぶせられ、職のみならず妻まで奪われた男、という非常に重みのある役どころです。撮影時、格之進という役に対して、もしくは演じることに対して「もっとこうありたい」と怒りを感じたことはありましたか?
草彅 というより、格之進に対して純粋に怒ってたね。僕からすると、すごくイライラする人物なんですよ。自分を貫き通す気持ち、武士の誇りがあまりに強いせいで、清原果耶さん演じる娘・お絹までひどい目に合わせて。
2024.05.26(日)
文=「週刊文春」編集部