この記事の連載
- 漫画家・オキエイコさんインタビュー
- 『もしもなんて来ないと思っていた猫』より
「猫を残して死ねない問題」を解決するために
――ここからはオキさんご自身についても教えてください。2匹の猫ちゃんたちと暮らしていますが、ご自身の成長や変化を感じることはありますか?
う~ん、そうですね……。私は子育てもしているんですけど、猫を育てることもそれと変わらないなと思います。だけど一番の違いは、猫は最後を受け止めてあげないといけないこと。最後の瞬間を思うと悲しくて仕方ないですが、そのことをしっかりと考えないといけないんですよね。命を預かっているという責任は日々感じていますし、猫と暮らし始めてから命について考えることが増えたと思います。
もちろん考えたくないほど辛いですし、きっと一緒に成長してきた子供たちも辛い思いをします。だけど、きっと命の尊さを知るという意味でも、子供たちにとっても大切な時間になると思っています。
――今回の漫画もそうですが、オキさんが「猫を残して死ねない問題」をライフワーク的に発信するのはなぜですか?
悲しむ猫を1匹でも減らしたいですし、それを防げるのなら防ぎたいからです。「もしも」の時が絶対に来ない人なんていないんですよね。私自身、過去に家に不審者が入ってきたことがあって、死が頭をよぎったことがありました。そういう経験もあって、誰にでも「もしも」があることが知ってほしいという気持ちがあるんです。
――壮絶な経験ですね……。ではその「もしも」の時に備えて、私たちがしておくべきアクションはありますか?
災害対策と同じで、「もしも」の時のために準備をしておく必要はありますね。例えば、地震や洪水などの災害時。人命が優先される中で飼い主の私たちは何ができるのか。そう考えた時に、猫のために水や餌を何週間分か用意しておくことはできるはず。災害時に備えて、できることはやっておいた方がいいと思います。
それから、自分に何か起きた時に、飼い猫を預かってくれたり、引き取ってくれたりする民間のサービスもあります。そういうものを頼るのもいいかもしれません。
――なるほど。オキさんはこの先、猫ちゃんたちのためにどんな活動をされる予定ですか?
私が制作している「ねこヘルプ手帳」は外出時に活用できるものなので、家の中で「もしも」が起きた時にカバーできるものを作りたいと考えています。例えばアプリを立ち上げるだけで飼い主の生存確認ができ、アプリを開いた形跡がない場合は予め登録しておいた家族や友人たちに連絡がいく、みたいな。そんな飼い主も猫も幸せに暮らしていけるようなアプリを作れたらいいなと思っています。
『もしもなんて来ないと思ってた猫』オキエイコ
X(旧Twitter)で話題となった「もしも猫」が書籍化。「もしも自分の身になにかあったら愛猫たちは……」から始まる物語は、飼い主たちからの共感を呼び、トータルいいね数が35万を超える。本作完結後もスピンオフ作品を連載し、猫ファンの間で愛されている。
実業之日本社 1,430円
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2024.05.17(金)
文=船橋麻貴