なるほどと感心して、それ以来、新人作家さんにも必ず指導しています。とにかく高橋先生の漫画って気持ちいいんですよ。どんな年代でも、どんなに脳みそが疲れていても、いつだって楽しく読める。だから時代を越えて愛されるのではと思います。
40歳近く年下の編集者にも…
――なるほど。有藤さんは高橋留美子作品が古びない魅力はどこにあるとお考えでしょうか?
有藤 高橋先生がもともと持っていらっしゃる感覚が第一ですが、担当編集者の言葉にしっかりと耳を傾けてくださるところも大きいのかなと。
森脇 ああ、わかります。
岡本 確かにそうですね。
有藤 やはり担当が変わるたびに、違った意見が出てきたり打ち合わせのやり方が変わったりすると思うんですね。しかも『うる星』連載当時は先生より編集者が年上でしたが、キャリアを重ねるにつれてどんどん年下になって、今や先生が60代で現担当の岡本は20代です。
年齢差は40歳近くあるけれども、若い編集者の意見もちゃんと聞いて、作品に必要であればその感覚を取り入れてくださる。そこも作品が古びない一つのポイントではないでしょうか。
森脇 僕も先生との打ち合わせで、正直『笑点』なら座布団1枚ももらえない答えを返してしまって。でも先生は真摯に傾聴して「だとすると……」と対話しながらアイディアを磨き上げてくださった。あの体験は忘れられないです。
有藤 納得がいくまで担当と話し合い、読者がもっとも楽しんでくれる「ベストな展開」を見つけ出す。その姿勢は『うる星』時代からまったく変わらないですね。
〈「『うる星』16ページを3日間で」「先生は物語を“作って”いないみたい」…担当編集者を驚愕させた、高橋留美子の創作術に迫る!〉へ続く
2024.05.04(土)
文=「週刊文春」編集部