悩みのない人って、いないですよね。自分でカフェをやっているので、お客さんの悩みを聞くこともありますし。

 今の世の中って、複雑になりすぎていて、スマホを見過ぎている自分がいやで、見なくてすむ方法をスマホで調べたり、リラックスしましょうという方法をやりすぎて、かえって疲れたりする……。自分もそうなんですが、人って、結果や成果をどうしても求めてしまう。

 でも、ただやるべきことをやり、そこにいるだけでいい。ぱっと外を見たら、自然にあるべきものがそこにあって、物事ってもう少しシンプルなんじゃないかな、と感じたんです。

――ところで、標野さんの作品には、いつも美味しそうなカフェ・メニューが登場しますが、今回は季節の和菓子がたくさん出てきますね。

 はい、和菓子、大好きです。この時期は緋桜のように、あちこちの桜餅を食べるのを楽しみにしています。お正月は、もっぱら花びら餅。お彼岸には、ぼたもちも食べましたね。

――自分も〈キャフェ チェリー・ブラッサム〉を訪れ、お茶とお菓子をいただきながら、窓の外をいつまでも眺めていたくなりました。〈わたくし〉に、悩みを聞いてほしい(笑)。

 「満開の桜も素晴らしいけれど、散り際にも楽しみはある」――帯にある言葉ですが、この物語で自分がいちばん伝えたかったことです。

 今まで書いてきた作品とはちょっと毛色が違うものになり、いきなり語りはじめたりダジャレを言う猫も登場しませんが、記念すべき10冊目。皆さんからどんな感想が届くのか、とても楽しみです。

桜の木が見守るキャフェ(文春文庫 し 71-1)

定価 803円(税込)
文藝春秋
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2024.04.25(木)