この記事の連載
- 荻野いづみインタビュー #1
- 荻野いづみインタビュー #2
- 荻野いづみインタビュー #3
アンテプリマのワイヤーバッグと言えば、1998年の発売から、2000年代にかけて一世を風靡した最先端トレンドのバッグ。誰もが皆、こぞって手に入れようと店舗に長い列を作ったものでした。
そのワイヤーバッグがブランド設立30年を経て、再度熱いトレンドを形成しています。23年の春夏商品では、20~30代がワイヤーバッグ購入客全体の46%を占め、そのうち92%が新規客とのこと。スマートでファッショナブル、そして今もなおモダンの先端を行くワイヤーバッグが、スマホ一台だけで外出できてしまうデジタルネイティブ世代や、20~30代の若年層を中心に人気を博し、そして親世代のハートも熱くさせているそうです。
今回はそのアンテプリマのクリエイティブ・ディレクターである荻野いづみさんにインタビュー。決して一筋縄ではいかなかった彼女の人生と、女性実業家として先見の明を持ち、アンテプリマを長年にわたり一流ブランドたらしめてきた彼女の人生哲学について聞きました。(全3回の1回目。#2、#3を読む)
2世代にわたり、イット・バッグとなったワイヤーバッグ
――2023年、ブランド創業から30周年を迎えられたとのこと、おめでとうございます。ワイヤーバッグが今、再ブームとなり、23年春夏では、20~30代がワイヤーバッグ購入客全体の46%を占め、そのうち92%が新規客だとうかがいました。若年層へのヒットの理由を荻野さんはどう見ていらっしゃいますか?
コロナ禍の後、ファッションはハイブランドとファストブランドに二極化し、中間がすっぽりと抜けてしまった状態です。一方で、今の若い方たちは“モノを見る力”や“選ぶ力”にすごく長けていて、「どうしてそれを選ぶのか」という部分にこだわりがあるように思います。
そういった、何十万もするバッグを持つことには抵抗があるけれど、あまりこだわりのないものは持ちたくないという若い人に、アンテプリマが刺さったのではないでしょうか。私たちにとって、本当に嬉しい出来事だと思っています。
1993年の創業以来、アンテプリマを育ててきて、その道程でミラノコレクションに参加したり、アーティストとのコラボレーションを行ったりしてきました。日本とイタリア、伝統と革新をつなぐというミラノサローネの趣旨に賛同して、様々なアーティストやデザイナーをお招きすることもあります。そういった、ブランドとして“売る以外のこと”にも一生懸命コツコツ取り組むうちに、アンテプリマの考え方に共感してくださる方が増えたのかもしれません。
もちろん、製品の使いやすさという視点でも、スマホと小さなお財布やカードだけポンと入れて出かけたいという若い方のニーズに、アンテプリマのバッグがフィットしたという理由もあると思います。
2024.04.17(水)
文=前田美保
写真=佐藤 亘