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 日本バレー界を代表主将としてけん引し、現在もプロ選手として高い実力と人気を兼ね備える柳田将洋選手。一方、中学3年生で新人賞を受賞し、現在は医学部に通いながら2冊目の『八秒で跳べ』を上梓した作家の坪田侑也さん。ふたりを繋ぐキーワードは「慶應」と「バレーボール」だ――。前編を読む


坪田 僕が『八秒で跳べ』という作品を書いた理由のひとつが、自分で慶應の中学時代から、大学生になった今でも、ずっと医学部体育会でバレーボールをやっていて、バレーにおけるメンタルはかなり重要で、そこが小説とも親和性が高いと考えたからなんです。

柳田 メンタルはすごく重要な部分だと僕も思います。

坪田 試合中はどんな風に、ご自身のメンタルのことを考えているんですか。

柳田 うーん、表現するのは難しいですね。自分自身でコントロールできるかどうかの場合もあれば、隣の選手とうまく調和しつつ、チーム力を上げる瞬間もあります。自分自身の力で突破するのと、自分が引っ張って周りを引き上げなきゃいけないところでは、表現の仕方というか、アピールだったり、雰囲気の出し方だったり、ぜんぜん違ってくる。これを瞬時に判断して、適切な行動をとれるかは難しいけれど、チームのリーダーだったら、それが出来ないといけないとも思います。

 たとえば、僕はサーブが得意な方ですけど、やはり練習通りに打てるかどうか――まず、練習でしっかり打てる前提があって、試合のシチュエーションでも同じことができるかは、メンタルが大きく関わってきます。0点対0点でのサーブか、23点対24点で負けている時のサーブで、まったく同じ気持ちで打てるかと言われたら、それは違いますよね。でも、そういう場面でも同じように、再現性のあるプレーが出せる人は、やはりメンタルが強いと思うし、プロであればそこで必ず結果も出します。

坪田 僕が観戦した東京グレートベアーズ(GB)の試合では、柳田選手がいちばん最初にサーブを打っていたのですが、最初のサーブってどんな感覚ですか。

柳田 最初はもう何も考えず、1回しっかり、次ももう1回、っていう感じです。コントロールミスもあるので、そこは100%ではなく、80~90%くらいの感覚ですけど、そこにプレッシャーは、今はあまり感じません。

坪田 バレーの試合は、ひとつひとつのプレーはすごく激しいのに、それが途切れる瞬間が必ずあります。ラリーが切れて、次のラリーがはじまるまでには、どんなことを考えているんでしょう?

2024.04.05(金)
文=第二文芸編集部
写真=榎本麻美
ヘアメイク=k.e.y小池康友
協力=東京グレートベアーズ