一瞬、CGに手を出したこともある

 ——世界中が今、コンピューターグラフィックスでアニメを作ることが全盛という時代にあって、全編手描きにこだわったこの作品がアカデミー賞を取ったことについて。鈴木さんはどんな感想をお持ちですか?

 鈴木 彼(宮﨑監督)も一瞬ね、コンピューターグラフィックスでやれば「今の労働力が減るのかな」って、それでコンピューターグラフィックスのほうに手を出したこともあるんですよね。ところが彼の思いつくことってね、だいたいコンピューターに向いてないんですね。今回の映画でも、僕はいつもその例を出すんですけども、鳥の中から人間が出てくる……アオサギの中から人間が出てきましたよね、サギ男っていう。あれはね、いちばんコンピューター3Dでは作りにくいんです。だから、彼のやるものはやっぱり手描きでしか作れない。その面白さだっていう気がします。

 ——制作に7年をかけ、費用も莫大だったとお聞きしているんですが、プロデューサー的には回収したというふうに思っていますか。

 鈴木 本当にね、回収できないと僕思ってたんですよ。というのは、ただでさえ、(宮﨑監督は)お金を使うのが得意な人なんで。それをいつもの倍以上の期間をかけて作る。そうしたら、すんごい赤字を生むと同時に、もう1個、僕が心配していたのがね、途中で死んじゃうんじゃないかって。まあ、おかげさまで最後まで作り上げることができて、公開までいたったんですけれども。僕らの想像を超えてお客さんに来ていただいた。で、今回の特徴で言うとね、日本はさることながら、実は海外の興行成績がものすごく良いんですよ。もしかしたら回収できちゃうのかなっていう、そんな気がしております。これはたぶんそうなるね。

 ——宮﨑監督と長くお付き合いされて、こういう歓喜の瞬間にも一緒に立ち会ったということですけれども、鈴木さんにとっての宮﨑さんっていうのは、どういう存在ですか。

2024.04.11(木)
文=「文藝春秋」編集部