美術館で心ゆくまでアートを鑑賞するひとときは、ほんの1日の休日でも、ちょっと特別な日に変えてくれます。すてきな食事の予定があればなおのこと。
東京国立近代美術館内の「ラー・エ・ミクニ」は、そんな休日にぴったりの一軒。美術鑑賞の前後に、緑豊かな眺望を楽しみながら、アートのように美しい料理を堪能できるレストランです。
春を迎え、「ラー・エ・ミクニ」では毎年大好評の「春の桜祭り」がいよいよ開幕。華やかな彩りにあふれ、目と舌を楽しませてくれるコースメニューを覗いてみましょう。
芸術と料理の融合で、東京の地産地消をアートする
地下鉄・竹橋駅から歩いてすぐ、北の丸公園に堂々たる姿で佇む歴史ある美術館、東京国立近代美術館(MOMAT)。正面に立つイサム・ノグチの巨大なオブジェ《門》が見えたら、そのすぐ隣が三國清三シェフプロデュースの「ラー・エ・ミクニ」です。
「芸術とミクニ」という名前が指すとおり、この店のテーマは「芸術と料理」。「東京の地産地消をアートする」というコンセプトのもと、江戸東京野菜をはじめとした伝統野菜やハーブ、調味料など、さまざまな東京の食材を用い、フレンチとイタリアンが融合した料理の数々を作り上げています。
北の丸公園と皇居の豊かな緑が大きなガラス窓に広がる店内は、美術館の展示室のようにモノトーンで統一され、スタイリッシュな落ち着きある空間が広がっています。
アート鑑賞の前にランチを楽しむ人や、見終わった後にディナーをゆっくり味わう人など、「MOMATに行くなら食事はここ」と決めている常連客も少なくないそうです。
もちろん美術館に入館しなくても食事は可能ですので、記念日などちょっと特別な日に訪れてみるのもおすすめです。春ともなれば窓からは満開の桜を眺めることができ、絶好のお花見席として早くから予約で満席となる日も。
さて、そんな「ラー・エ・ミクニ」のお楽しみのひとつが、この時期だけのコースメニュー「春の桜祭り」。春に旬を迎える食材を中心に、華やかで明るい色彩に仕上げた料理の数々を堪能できます。
「周囲の桜が満開の時期を迎えますので、その景色に合わせ、桜をモチーフにした料理を揃えました」と庵原瑞穂シェフ。今回はランチコースの中から「メニュー ディ サクラ」を味わわせていただきました。
まずアンティパストは、真っ赤なトマトソースが目にも鮮やかな「山菜と春野菜のバーニャカウダ」。山菜といえば、これぞ春の味覚という食材。その香りやほろ苦さ、そしてスナップエンドウなどの春野菜の甘さがそのまま楽しめ、濃厚なバーニャカウダソースと爽やかなトマトの酸味がさらに味わいを深めてくれます。
ふた皿目のパスタは、「シラスと菜の花、ローストしたアーモンドとルルロッソ小麦のタリオリーニ」。シラスもまた、3月頃から旬を迎える食材のひとつ。釜揚げと素揚げ、2種類のシラスの異なる味わいと食感が絶妙で、菜の花のほろ苦さやローストしたアーモンドがアクセントを添えます。
希少な北海道産小麦「ルルロッソ」を使用した平打ちパスタは、もちもちと歯応えがよく、小麦本来の香りがふわりと感じられます。ソースともよく絡み、「もう少し食べたいな」と欲張りになってしまいそうなひと皿です。
2024.03.27(水)
文=張替裕子(Giraffe)
写真=杉山秀樹