うざくて失礼極まりないオヤジでも嫌われない演技力
というか、様々な宮藤官九郎作品に主演している時の阿部サダヲは、いつも早口でテンパっていてうるさく走り回っていることが多い気がします。情緒不安定気味というかキレてることが多いというか。
野球部顧問という設定が今回の市郎と同じだと喜ばれた『木更津キャッツアイ』(TBS系)の猫田から、『舞妓Haaaan!!!』などの映画の主人公、大河ドラマ『いだてん』(NHK)の田畑政治役(これは実在の人物で本人が早口でせっかちだから、という理由ですが)などなど、小市民的なメンタリティーだったり、個人的な強いこだわりのために一生懸命走り回っていたり、という役の印象が一般的には浸透していると思います。
ですが、例えばドラマ『医龍-Team Medical Dragon-』(フジテレビ系)で演じた天才麻酔医の時は静かな自信家、『恋する母たち』(TBS系)の時は、ノリは軽いけど意外に頼りがいもある人気落語家などなど、走り回っていなくても記憶に残る役も多く演じてきています。
またその昔、連続ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)にゲスト出演した際の哀しい犯人役の頃から、狂気をはらんだキャラクターや不気味な役も抜群にうまく、映画『死刑にいたる病』で演じた連続殺人鬼で死刑囚の役では、「阿部サダヲの目が怖すぎる」と見た人を震撼させました。
そのくらい幅広い演技力がベースにあるから、不適切発言だらけのオヤジを演じていても安心して見ていられます。
また不思議と(失礼)清潔感があるのも彼の特徴だと思います。昭和のギラギラオヤジといっても、ドラマ内のセクハラ司会者・ズッキー(秋山竜次・ケーシー高峰と山城新伍を混ぜたような濃いキャラ)のような、油ぎった下心をあまり感じさせないので、下ネタもセクハラ発言も嫌悪感があまりない(だからOKという意味ではありませんが)。
そんなもろもろの阿部サダヲの要素によって、視聴者を考えさせような社会的テーマでも、多くの人が楽しくスルッと受け入れながら見られるのだと思います。
物語は中盤で、令和への疑問を呈しつつも、市郎の常識も変わっていくのかなどなど、先の展開が楽しみ。
オリジナル脚本でここまで面白く、議論を巻き起こすほど話題になっているドラマとしても、本当におすすめです。未見の方は今からでもぜひ!
『不適切にもほどがある!』
毎週金曜22時放送(TBS系)
https://www.tbs.co.jp/futekisetsunimohodogaaru/
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2024.02.24(土)
文=斎藤真知子