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2018年5月28日から制作準備に入り…

――ロマンは1970年代のソ連軍のパイロット将校です。どのように役に取り組みましたか?

オレグ 役者としてここまでハイレベルなプロジェクトに参加するのは、僕は初めてであり、素晴らしい経験ができました。衣装をはじめ全てがオーガナイズされていて、徹底されていたんです。準備期間をとても長く取っていたので、専門家について数日間、NATO軍のトレーニング・キャンプで訓練を受けることができました。おかげで、軍人らしい仕草や行動様式も身についたと思います。

 ロマンという人物を理解するにあたっては、セルゲイの原作に加えて、生前のセルゲイが実際にロマンについて語った音声テープもとても参考になりました。さらに監督とトムは、僕の話し方などに合わせて、脚本にも手を加えてくれたんですね。とても寄り添ってくれたおかげで、人物にもストーリーにも深く入り込むことが出来たんです。完成した映画を観た時、そこには僕ではなく、別人が映っていました。ロマンだったんです。

 撮影現場もこの物語を語るのにふさわしい雰囲気が成立していて、この映画に参加できて心から良かったと感じています。全てのシーンでリハーサルをやるなど、とても贅沢に時間をかけていました。もちろん中には大変な作業というか、僕はそれまで英語が話せなかったのでダイアログ・コーチについて特訓もしましたし、パイロットの訓練も受けなければなりませんでしたが、全部が完璧に準備されていたので、安心して取り組めました。2018年の5月28日から制作準備に入り、9月5日から実際の撮影を開始したのですが、その時にはもうロマンになる準備はできていました。2018年か、もうそんなに時間が経ったんですねえ。

――オレグさん、記憶力が良いですね! 英語も話せるようになり、この映画への出演で、俳優として大きな扉が開いたのではないですか?

オレグ そうですね。次は日本語を話せるようになりたいから、日本映画のオファーを待ってますよ(笑)。でも実際、6年前の自分に、今の状況は想像だに出来ませんでした。こうやって英語でインタビューを受けたり、HBOやNetflixにオーディション用ビデオを英語で送れるようになりましたから。“NO ENGLISH, NO ROLE”という時代が長かったんです。オーディションの話が来ても、英語が酷いのでそこでつまづいてしまったんですね。

 今回もパートナーがオーディション用ビデオを撮ってくれたんですが、彼女がカメラの後ろで英語のカンペを持って、それを見てようやくセリフを言えるレベルでした。そしてモスクワで実際のオーディションに呼ばれ、トム・プライヤーとあるシーンを演じて見せることになった。「僕の英語はひどいですよ」と言ったら、監督からは「何語で演じてもいい」と言われたんです。トムはもうオーディションの相手役を1000回もやっていて、中国語でもウクライナ語でもロシア語でもイタリア語でも、君が何語で話してもリアクションできるから、って。あれは写真を現像するシーンだったかな?

 ともかくロマン役に決まったあとは、ダイアログ・コーチについて何カ月も英語のレッスンをしましたし、撮影中もセリフが多いので、毎朝毎晩レッスンしました。

2024.02.21(水)
文=石津文子
撮影=深野未希