静まり返った真っ暗な室内

 カタン、と音を立てて降りてきたのは屋根裏に続く木の階段でした。

「屋根裏に行けるんです。結構広いので普段使わない物とかの収納に便利ですよ!」

「おおー! いいですね」

「ぜひ上がってみてください」

 青年に促された高木さんはギッ……ギッ……ギッ……と木の階段を昇っていき、頭を覗き入れました。

 静まり返った真っ暗な室内。

 モワッとした夏の熱気。

“死ぬ”
“前の住人が死んだのはここで、人を死に至らしめる何かがいる”

 瞬間、高木さんはそういう猛烈な恐怖に襲われたそうです。

 総毛立ち、にわかに震え出す体を必死に抑えながら足早に階段を降りました。

 しばしの間黙りこくっていた高木さんですが、何も言わずに目の前に佇む青年を思い出すと怯えを取り繕うように「い、いやぁーやっぱり屋根裏は暑いですねぇ~」と言葉を絞り出したそうです。

「…………」

 青年は黙って高木さんを見つめていました。

「あの……ここって」

「何もないですよ」

「……え、はい」

「…………」

「……あの、例えばなんですけど、この屋根裏、収納いらないので塞いでくださいって頼んだら、やって──」

「はい、できます。全部無料でやれます」

 高木さんが言い終わる前に青年はそう言ったそうです。

2024.02.03(土)
文=むくろ幽介