ATAMI 海峯楼の「日本料理 楽精庵」は、これまで宿泊者しか味わうことのできなかった料理が外来のゲストも愉しめるように、がコンセプト。空間の贅沢さに度肝を抜かれつつ、料理長が紡ぎ出す料理の存在感がまた凄い。海香鍋は、伊勢海老、蛤、穴子というラインナップにじゃがいも、ズッキーニ、そしてレタスという合わせ技。生姜のアクセントにもセンスを感じ、言葉すら出てこないほどに圧倒される。

7月 ANDO HOTEL 奈良若草山(奈良県奈良市)

https://andohotelnara.com/ 

 眼下の奈良市街から5℃涼しい別天地。そんな野趣をまるごと受け入れるような贅沢客室には、リビングに続く広大なデッキや露天風呂が揃う。リノベーションされたホテルだが、新しく建てられたホテルとは異なるセンスが光る。

 漆黒の山の中だからこそ、眼下の都が煌びやかに映るホテルダイニングでは、先付にいきなり毛蟹が登場し、一気にテンションマックス。さらに驚いたのが椀物。冷製の丸茄子摺おろしだが、まぐろの出汁がピューレ状になった玉ねぎと絡んで美味。雲丹出汁のしゃぶしゃぶを楽しみ、最後は大和牛をくぐらせた旨み凝縮スープにご飯投入、雑炊も美味すぎで完食。見て、体験して、味わい尽くす素晴らしいコースだ。

 

7月 グランドプリンスホテル大阪ベイ(大阪市住之江区)

https://www.princehotels.co.jp/osakabay/

 以前ここにあったハイアットリージェンシーはかなり利用してきたが、リブランドを経てもダイナミックな贅を尽くした趣は健在。客室も余裕を感じるが、個人的なツボはなんといってもずっと変わらない“フェリーさんふらわあビュー”だ。旅の醍醐味を感じられる。

 どでかい円形ダイニングテーブルを見た瞬間、ルームサービスを頼みたくなった。てんこもりのフライドポテトはハイアットリージェンシーを思い出す。ついカレーをオーダーしてしまうのはホテルカレーへの信頼の証か。こちらで秀逸だったのが、カジキマグロのインボルティーニ。真夏に嬉しい酸味あるトマトベースのソースは、フレグラで味わいがさらに広がる。

2024.02.04(日)
文=瀧澤信秋