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一度見ただけですべてが理解できる映画ではない

――インスタライブで「一人暮らし中は、納豆ご飯やみそ汁ばかりで体重が減る」とお話しされていましたね。 

橋本 現場では食べて、力をつけていましたよ。インスタライブでは「スプラトゥーンが面白い」とよく話しているのですが、現場での皆さんとのやり取りが楽しくて、スプラトゥーンで遊ぶ暇もないくらいだったんです。でも、ホテルに帰ってから、友達と通信で遊んでいたかな(笑)。

――今作は見るたびに深みが増す映画です。

橋本 一度見ただけでは、なかなかすべてを咀嚼できる映画ではないとは思います。何度も見るうちに、身体に入ってくる。そういう噛み応えのある映画ですね。監督は映画の中に、思いを込めたモチーフをいくつもちりばめているんです。例えば精神科医を訪ねる道中にある親指のオブジェ。彫刻って時を止める芸術だから、沙苗の状態と重ねたかったそうです。

 私が好きなモチーフは天気予報です。新幹線で東京と長野を行き来する沙苗がラジオで聞いているのですが、監督は、「天気予報を聞くことって、明日生きることを当たり前だと感じている人の行為だから、沙苗にさせたかった」とおっしゃっていました。監督が選んだモチーフから、役への理解が深まりました。

 もしかすると、映画をご覧になる方と、監督の意図や思いが違う解釈になるかもしれません。でも、その違いの面白さも含めて映画を味わってほしいです。

2024.01.26(金)
文=ゆきどっぐ
撮影=平松市聖