9月20日の血圧は「最高170」
シンシンの次男と次女は、2021年6月23日に誕生した双子のシャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)。4頭の子どもは全員、人工授精ではなく、シンシンとリーリーの自然交配によって生まれました。
シンシンが上野動物園に来てからの約12年間で、発情期や出産・子育て、引っ越しのためにしばらく公開休止となったことはありますが、体調不良が原因でおよそ10日間も公開休止となるのは初めてです。
公開休止を受け、SNSでは「大丈夫でしょうか」「無理せずゆっくり休んで」「スタッフの皆さま、シンシンをよろしくお願いします」といった、心配したり気遣ったりする声が相次いでいます。
9月22日(金)に上野動物園に取材したところ、シンシンは9月15日(金)と17日(日)に鼻から出血して、9月18日(月)も少し鼻血を出したそうです。「たかが鼻血で」と思われるかもしれませんが、決して油断できません。例えば、タイのチェンマイ動物園にいたメスのリンフイは今春、鼻血を出した後に21歳で急死してしまいました。
上野動物園は、シンシンの鼻血が続いたため、9月20日(水)に血圧を測定したところ、「最高170、最低146」と高い値を示しました。高血圧になると、パンダに限らず一般的に、心臓や血管に負担がかかります。すると心臓病や脳卒中になったり、網膜剥離で目が見えなくなったりするリスクが高まります。
高血圧の治療としては、基本的には人間と同じように降圧剤(こうあつざい)を投与します。シンシンにも9月21日(木)に降圧剤を投与すると、血圧は「最高117、最低95」になりました。
上野動物園の大橋直哉教育普及課長は「人間用の血圧計で測定しているので、どこまで正確かは分かりません。しかもシンシンの血圧をはかったのは今回が初めてなのでデータがなく、絶対にこの値が正しいと言えないのが難しいところです」と前置きしたうえで、「血圧は下がりましたが、それが継続するかについては様子を見る必要があります」と9月22日(金)に指摘しました。
薬を投与されたシンシンがどのような反応を示すか分からず、公開しながらでは十分に観察して、ケアすることが難しいので、上野動物園は公開休止に踏み切りました。
2024.01.03(水)
文・撮影=中川美帆