高脂血症との所見
上野動物園は、シンシンの血圧検査の結果から、高脂血症、つまり血の中に脂質が多いという所見を出しました。
シンシンは主食の竹のほか、おやつや栄養補助食として、リンゴやパンダだんご(トウモロコシ粉や米粉などを蒸して冷ましたもの)なども食べていました。食べっぷりもよく、上野動物園の公式サイトのプロフィール欄には「好きな食べ物のためなら、トレーニングにも積極的に付き合ってくれる食いしん坊です」と紹介されています。でも高脂血症となれば、今後はおやつを減らすといったこともあるのかもしれません。
上野動物園によると、シンシンは過去に高血圧となったことがありません。一般的に高血圧は、高齢のパンダに多い症状です。日本では、和歌山県のアドベンチャーワールドにいて、30歳だった2023年2月22日に四川省へ渡った永明(えいめい)や、神戸市立王子動物園にいる28歳のタンタン(旦旦)は、高齢なので健康診断として血圧測定をしています。
何歳のパンダから高齢と見なすかは専門家によって見解が分かれますが、シンシンの「18歳」はおおむね高齢には当たらず、前述のように血圧測定をしたことがなかったのも無理はありません。
初めての血圧測定に挑戦
初めてにもかかわらず、血圧を測定できたのは、日頃のハズバンダリートレーニング(健康管理や輸送などの際に動物が自ら動くようにするためのトレーニング)のたまものでしょう。
パンダはかわいらしく見えても猛獣なので、成長すると、人間が同じ空間に入らない「間接飼育」になります。しかし血圧測定や採血などをするには、パンダの腕(前足)をケージのすき間から出してもらう必要があります。ハズバンダリートレーニングをしていると、リスクのある麻酔をかけずにこれらをしやすくなり、パンダと飼育係や獣医師の危険を減らすこともできます。
シンシンは、採血するために腕を出してじっとするといったトレーニングを中国で受けていました。上野動物園に来て半年以上が経った2011年9月から同園でトレーニングを再開すると、中国で経験したトレーニングはすぐに思い出したそうです。
2024.01.03(水)
文・撮影=中川美帆