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◆『マイホームヒーロー』の佐々木蔵之介

知恵のみで戦うお父さんは佐々木蔵之介にしかできない!

 大ヒットコミックスが原作でスタート前から話題になっていたのが『マイホームヒーロー』(MBS/TBS系)。筆者は原作が人気だということは知っていたものの、こちらは未読でした。

 が、キャストを見た瞬間“今期見るリスト”に加えたのがこの作品。だって佐々木蔵之介さん(以下敬称略)が主演だっていうから。

 物語は、佐々木蔵之介演じるサラリーマン・鳥栖哲雄が、娘の半グレ彼氏を殺してしまったことから始まる、隠ぺい、逃走、戦闘の生活を描いたもの。公式サイトの彼のコメントに「登場シーンの9割がピンチ、撮影中は毎日血濡れでボコボコ」とあるように、ずっと血だらけの蔵之介(勝手な名前呼び捨てすみません)が新鮮なサスペンスです。

 哲雄が裏社会の人間たちから逃げきれるのか、毎週ハラハラしながら見ています。ちなみに哲夫の妻で、夫の殺人にも動じることなく隠ぺいを手伝うようになる鳥栖歌仙を演じる木村多江さん、哲雄が殺した男の父親、麻取義辰を怪演している吉田栄作さんもかなりいい味を出しています。

 哲雄は生粋の推理小説オタクで、特に肉体派なわけではないごく普通のお父さん。このごく普通のお父さんが、培ってきた推理小説の知識のみで裏社会の人間たちと戦っていくのです。図らずもバディのように行動を共にすることになる間島恭一(高橋恭平)と、殴る蹴るの肉弾戦ではなく頭脳戦、裏のかきあいを繰り広げていくという点がかなり面白く、手に汗握りながら見ているのですが、荒唐無稽な設定でも哲雄にきわめて説得力があるのは、元々知的な能力の高さを感じさせる蔵之介だからこそ。

 そういう知的な印象もありながら、蔵之介の鋭い眼光には、ふとした瞬間にキレたら怖そう、という危うさが出るので、裏社会とは関係なく生きてきたサラリーマンが、どうにかこうにか彼らと渡り合っているという状況でも納得しやすいのです。

2023.12.01(金)
文=斎藤真知子