この記事の連載

 各ブランドのオタク的な偏愛により生み出されてきた名品コスメの歴史をクローズアップ。執着にこそ真実ありという時代、信じるべきものがここにある。(前後編の前編/後編を読む)


なぜ今、偏愛系の研究開発から生まれたコスメを偏愛すべきか? 10のブランドの「執着の歴史」から紐解く。

 偏愛コスメと言えば、これまでもっぱら選ぶ側、使う側が偏愛するコスメのことを指していたが、今回は逆に作る側、売る側の偏愛をクローズアップしてみた。

 結論から言うなら、まさしく偏愛系研究開発こそが、真の名品を生む、そういう話をしたいのだ。その証に、ロングセラーとされている製品の多くが、じつは偏愛系の開発によって生まれている。

 例えばSK-IIのフェイシャル トリートメント エッセンス。日本を代表するロングセラーコスメだけれども、その偉業は言わずもがな、“ピテラ”という酵母の発酵代謝液のなせる技。膨大な数の酵母の中から最も肌効果の高いものを探し出して発酵させるという、いい意味でのオタク体質がなければ到達できないものだった。

 ましてや半世紀近くピテラの処方を変えていない。にもかかわらず、未だに次々ピテラの新しい効果が見つかってしまう。底知れない効果を持つからこそ、ピテラ一筋で邁進してきたわけで、全くブレないことはもちろん、こだわりをどんどん積み重ね、育てていくことは、それだけで名品を生む絶対条件の一つなのだ。

 言い換えるならば、そこまで研究開発者を夢中にさせる素材だから、歴史に残る大きな結果を残せたということ。

 今回そうした意味の成功例としての偏愛系ブランドを一堂に集めてみた。今はそれこそ、執着にこそ真実ありという時代、私たちもこうした偏愛コスメを偏愛するべきなのではないだろうか。

#1 一つの素材への偏愛が、傑作を生むって、こういうこと!

 天然成分主体のナチュラルコスメにも2種類ある。植物成分を100種類配合、みたいな“数で勝負派”と、一つの素材を極めて極めて極め尽くす“偏愛こだわり派”とが。その後者の象徴ともなる化粧品が生まれた。

 米としては主流にはなれなかった“黒米”という古代米の潜在能力を信じ続けた人と、その全方位の底知れない能力を引き出すたった一つの方法とも言える発酵の力を信じ続けた人との、絶世のコラボレーションによる新ブランドFAS。

 米発酵のスキンケアの能力は、もう説明するまでもないが、黒米発酵の肌の底力を強力に引き出すようなエイジングケア効果はきっと私たちの想像を超える。

 事実、黒米発酵液からは、738種の成分が見つかってしまった。一つの素材にこだわった結果、途方もない数の成分の集合体に。素材への偏愛が傑作を生む揺るがぬ証となるはずだ。

シロク

フリーダイヤル 0120-150-508
https://fas-jp.com/

2023.11.28(火)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)
Photographs=Hirofumi Kamaya

CREA 2023年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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