関口 私が思うに腕時計というものは、持ち主の個性や価値観を映す“嗜好品”だからだと思うんです。腕時計を見ると、その人の価値観や嗜好がある程度わかるんです。時には、時計が見知らぬ人同士の会話の糸口になるかもしれない。スマートウォッチはたしかに機能的ですが、そういったことはあまりない気がします。スマートウォッチが広く市民権を得たことで、逆に腕時計の嗜好品的な価値が際立ち、それが人々にあらためて認識されたのではないでしょうか。個性や価値観、仕事への姿勢を表現する道具として、本格腕時計を愛好する人は今後ももっと増えていくんじゃないかと思います。

​せきぐち・ゆう/1984年生まれ、埼玉県出身。出版社に入社後、スイス・バーゼルでの取材を重ね、2016年に業界最年少で腕時計専門誌編集長に。2019年には『HODINKEE Japan』編集長に就任し、2020年には『HODINKEE Magazine Japan Edition』を創刊。2023年10月にラグジュアリーメディア『Richesse』のデジタル版を創刊し、編集長を兼任する。

2023.10.28(土)
文=押条 良太