2023年、ローマと東京において、相次いでブルガリ ホテルがオープンを果たした。客室、ダイニング、バー、スパ……すべてのクオリティは、軽々と想像を超える。
世界中の羨望を集めるハイブランドが手がけるホテルの秘密とは? 3回に渡りブルガリ ホテルの魅力をご紹介。今回は洗練を極めたデザイン、愉悦のガストロノミー、真摯なホスピタリティを満喫できる、ブルガリ ホテル 東京。
透徹した美意識が生んだ巧緻な手仕事の数々
![ブルガリ ホテル 東京のラウンジを望むロビーの床に輝く意匠は、ブランドの象徴として知られるエイトポイントスター。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/c/d/1280wm/img_cd5186c26753a2d517c5bb13b03b3553675848.jpg)
東京駅の東側一帯に細長く横たわる街、八重洲。その地名は、オランダ商船の航海士として九州に漂着後、徳川家康より旗本の身分を授かり重用されたヤン・ヨーステンの日本名「耶揚子」に由来する。
2023年4月、歴史の薫るこの一等地に、ブルガリ ホテル 東京が開業した。
![この角度から見下ろす東京駅の姿は、実に新鮮。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/1280wm/img_3fb3025c9ca2f13e54ac977403025b36798106.jpg)
東京ミッドタウン八重洲の最高層部、40階から45階までを占めるこのホテルは、首都を見晴るかす絶景に恵まれている。
世界に冠たるラグジュアリーブランドが手がけるだけあり、その細部に至るまでを貫くのは、透徹した美意識。
![ロビーへと続く40階のコリドーの壁面を彩るモザイクは、青海波の文様に影響を受けている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/4/1280wm/img_7429e491aacca4b170bdab9e4f2accf3875524.jpg)
エレベーターを降りたゲストがまず足を踏み入れる40階のパブリックスペースでは、誰しも、巧緻な手仕事の施されたディテールに圧倒されるに違いない。
ロビーやダイニングにおいてスペースを区切るニレ材のアーチは、ローマのコンドッティ通りにあるブルガリ本店のそれを模しながら、日本の神社仏閣の建築様式を特徴づける火灯窓も連想させる。
![「イル・リストランテ ニコ・ロミート」のホールと個室とを区切るアーチは、日本の寺社によく見られる火灯窓を彷彿とさせる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1280wm/img_2deb03b718a655c64a0b6fc84d319f30782420.jpg)
漆黒の壁面を彩る扇形の文様の着想源はといえば、孔雀の羽を重ねて描いた東洋の青海波であり、また、ブルガリのコレクション「ディーヴァ ドリーム」に影響を及ぼしたカラカラ浴場の意匠でもある。
ここでは、異なるルーツを持つ文化的コンテクストが、自然に溶け合う。
![ホテルのシンボルは、1970年代に発表された「マウント・フジ ブローチ」。40階のギャラリーに展示されている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/6/1280wm/img_0660e85dc06f11c91385b40e7eb6acef465694.jpg)
ギャラリーでは、ブルガリ史を彩るアイコニックなジュエリーを展示。特に注目すべきは、霊峰富士と松の木をモチーフとする70年代の「マウント・フジ ブローチ」だ。
日伊の美学のマリアージュたるこの名品を元にしたデザインは、ホテルの象徴として、館内の様々な場所で目にするはず。
![ブルガリ ホテル 東京の「イル・リストランテ ニコ・ロミート」。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/2/1280wm/img_e25f3ea2b28543927189b19c33ac096c382533.jpg)
「イル・リストランテ ニコ・ロミート」は、天井の高い広壮な空間において、木の温もりに包まれてイタリアンを賞味できる至福のダイニング。
伝統にしっかりと立脚したレシピは、そこに留まらぬコンテンポラリーな創意工夫を加えることで、目を見張る進化を遂げている。
![「イル・リストランテ ニコ・ロミート」の“スパゲッティ ポモドーロ” 4,000円。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/5/1280wm/img_f551926b6cce583d6656debbc4551e34493928.jpg)
日本ならではの美食を提供するのが、「Sushi Hōseki - Kenji Gyoten」だ。
8席のみのカウンターで、小さな枯山水を愛でながら“おまかせ”の鮨を味わう体験は、忘れられない思い出となる。
![「ブルガリ スパ」には、3面の大きなガラス窓から明るい光が射し込む。©Bulgari Hotels & Resorts](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/3/1280wm/img_03ffa94c523f1178cd934427e7316a6d547120.jpg)
そして、これぞ豪奢の真骨頂と息を呑むのが、「ブルガリ スパ」。25メートルのスイミングプールの内壁はエメラルドグリーンのモザイクタイルに覆われ、透明な水の奥で高貴な光彩を放つ。
心身のウェルビーイングを追求したトリートメントも秀逸。サイエンスに基づき、ゲストそれぞれに合わせたビスポークの施術を行ってくれる。
![麗しいチョコレートやペストリーの並ぶ「ブルガリ ドルチ」の店内。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/9/b/1280wm/img_9b72207bc9ba1f033ea17883e20a4762606152.jpg)
2023.10.16(月)
文=下井草秀
撮影=嶋崎征弘
CREA Traveller 2023 vol.4
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。