結局、刺さるのは、男女の恋愛ではなく、「それ以外」。それ以外はBLだったりもしますが、親子関係が実は大きくて。『日出処の天子』もそうなんです。

岡村 聖徳太子とその母の。

よしなが そう。お母さんは弟ばかりかわいがり、優秀な長男を愛さない。しかも、彼が超能力を使うところを見てしまい、「この子は尋常ではない」と怖れてしまう。ですから、母に愛されなかった子の話でもあって。母の愛を得られなかったというその一点が厩戸の心に大きな穴を作り、それを埋めるために蘇我毛人を好きになる。

岡村 深いですね。

よしなが BLの祖ともいわれる竹宮惠子先生の『風と木の詩』もそうで、父と子の話なんです。主人公のジルベールが、自分の愛人だと思っていたオーギュストが実は父親だったとわかるという、めちゃくちゃ業の深い話なんです。

 私は、山岸先生、萩尾先生、竹宮先生、大島弓子先生など「24年組」(注:昭和24年前後生まれの女性漫画家たち)の先生方がお描きになった作品が大好きなんですが、それらは恋愛ものとして楽しむだけじゃなく、家族の話であることも大きいんです。

 

両思いなのに「両片思い」? 『何食べ』の2人の関係

岡村 そういう意味でいえば、『きのう何食べた?』も家族の話ですよね。料理好きのシロさんと天真爛漫なケンジを中心に、彼らの親がゲイの息子とどう向き合うのか、社会は彼らをどう受け入るのか、彼らは社会とどう折り合うのか、2人がどんな家庭を築くのか。

 そして、面白いと思うのは、二人の関係にどこか緊張感があることで。ちょこちょこ出てくるじゃないですか。知り合う以前はお互いにいろんな色恋を経験していたとか。だから、ちょっと間違えれば浮気してしまうのかも、壊れてしまうのかも、そんな一抹の不安もどこか匂わせていて。

よしなが そうなんです。ちょっと緊張感があるんです、ずっと。何年一緒に暮らしていても。

岡村 その関係性が、高橋留美子さんの『めぞん一刻』の五代と響子さんを彷彿するものがあって。読んでました?

2023.10.17(火)
Text=Izumi Karashima
Hair & make-up=Harumi Masuda(Okamura)