「ゆる言語学ラジオ」のJAPAN AKACHAN’S MISTAKE AWARDS
実際、子どもは一般化の誤りをしばしば犯す。第3章で紹介した「ゆる言語学ラジオ」のJAPAN AKACHAN’S MISTAKE AWARDS データベースにはたくさんのエピソードが寄せられた。その一つひとつが本当に興味深い。大人からすると、かわいい、ちょっとオバカな間違いと思いがちだが、子どもがことばを学ぶときの一般化の問題を見事に示している。同時に子どもの分析力と推論力の鋭さに舌を巻く。たくさんある中から二つ紹介しよう。
●ラジオネーム:N=0・5さん
部屋に入るときに扉が閉まっている場合や、トイレから出たい場合に「あちぇちぇー(開けてー)」と言っていたのですが、お菓子の袋も「開ける」だと気がついてから、ミカンを食べたいときも「あちぇちぇー」といって持ってきていました。なかなか便利なことばだと感心しました。
「開ける」は多くの子どもが過剰一般化することで有名な動詞だ。英語のopenについてもたくさんの過剰一般化の報告がある。たとえば電気をつけたり、テレビをつけたりするのにopenと言う子どもがたくさんいる。そして中国語ではそれは正解である。
中国語の動詞「開(カイ)」は、ドアを開ける、店を開けるなど日本語の「開ける」と同じ使い方があるが、そのほかに、電気をつけたりパソコンのスウィッチを入れるときにも、なんと車を運転するときにも使う。運転することを「開車」というのだ。だからN=0・5さんのお子さんの間違いは、中国語ではまったく正しい使い方なのだ。
2023.10.10(火)
著者=今井むつみ、秋田喜美