――そういう意味では、南海キャンディーズの漫才って時代を先取りしていたと思うんですよ。山里さんがしずちゃんに対してストレートに悪く言ったりはせずに、優しいツッコミをするじゃないですか。あの時点で「人を傷つけない笑い」をやっていたんじゃないでしょうか。

 

しずちゃん たしかに、あんまり否定してなくて、逆にプラスの言い方をしますもんね。山ちゃんの傷つけないツッコミ方っていうのは、そのときから変わらないですね。

10年以上続いた「山ちゃんとの不仲時代」

――そんな中で、お二人のネタでも時代に合わせて言葉遣いや、表現が変わったりはしてるんでしょうか?

しずちゃん 私はしてないけど、もしかしたら山ちゃんはしているのかもしれないですね。でも、コンビの間では割と許される範囲が広いんかな、とは思います。私はいまだに山ちゃんに対しては「気持ち悪い赤眼鏡」とか言ってますし。

――たしかにコンビ間だとあんまり問題にならないかもしれないですね。

しずちゃん そう思います。あと、悪く言う中にも「愛」が感じられればいいんじゃないですかね。そう言うと恥ずかしいですけど。

――南海キャンディーズは2004年の『M-1グランプリ』で準優勝して一気に有名になりましたが、そこから10年ぐらいお二人の仲が悪い時期が続いていたそうですね。

しずちゃん 10年以上じゃないですか。昔から山ちゃんはいろいろ言ってくるんですけど、私が口では勝てないから、何も言い返せなくて最初の頃は泣いたりしていました。それからは向こうもあんまり直接は言ってこなくなって、マネージャーを通したりするようになって。

――では、直接言い合うというより、冷戦状態みたいな感じだったんでしょうか。

しずちゃん はい。コンビで仕事をするときにも「今日こういう感じで行こう」みたいな会話もしないですし。二人で番組に呼んでもらって、MCの人から「しずちゃんはどう思う?」って話を振られたときに、山ちゃんがこっちを見てる目がめちゃくちゃ怖いんですよ。「こいつ、何を言い出すんだ? おもんないこと言うなよ」みたいな。その目が見れなかったですね。

2023.09.21(木)
文=ラリー遠田