“PEANUTSの世界にある森”で行われる音楽会にやってきた感覚を味わっていただきたい

――初回から指揮の栗田博文さんとピアノ・音楽監修をなさっている宮本貴奈さんとご一緒されてきましたが、お二人にはどんな印象をお持ちですか?

 栗田さんはディズニーのコンサートなどでもご一緒したことがある巨匠ですが、とてもアグレッシブでエモーショナルな指揮をなさる素敵な方です。子ども達に接するときも優しいですね。

 僕がスタイリストさんを通して作ったスーツがあるんですが、“それ、かっこいいね”とおっしゃって、すごく興味を示していただいて、ご自身も作ろうと思われたのか“どなたに連絡したらいいの?”って熱心に聞かれたときは、意外な一面を知ることができて面白かったですね。

 貴奈さんの最初の印象は結構サバサバされている方だなと思いました。英語の発音の指導をしていただいたこともあり、先生と生徒という関係でもあります。

 普段は本当にスヌーピーも音楽も大好きで、人間的にも音楽的にもふわっとした雰囲気と鋭いところの両面をお持ちです。とても意外でした。

――今回は演出も手がけられますが、どのようなコンサートにしたいとお考えですか?

 クラシックコンサート仕様だと、開演前のステージにはたくさんの椅子が並び、大きな楽器はすでに置かれていて、開演が近づくと演奏者たちが席に着き、マエストロが出てきて大きな拍手が湧き、ジャン! って始まるのが常ですが、今回のコンサートは“ノン、ノン、ノン”です。

 会場に入ってきた途端、“PEANUTSの世界にある森”で行われる音楽会にやってきた感覚を味わっていただきたいと考えています。“今から始まります”という感じにしたくないんですが、ちょっと難しいんですよね。そこが僕の腕の見せどころですが、観客のみなさんをワクワクさせたり、ドキドキさせたりしたい。僕がこれまで観てきたクラシックコンサートではないものを目指しています。

 数々のミュージカルや演劇のセットを手がけてこられた美術の松井るみさんにクラシックコンサートのセットをお願いするのは、今までにないことではないでしょうか。お金もかかることですが、コンテンツの価値を高め、その先にある満足感を得るには必要なことだと僕は思っています。観客のみなさんにPEANUTSの世界に瞬時に入っていただくために、考えた一つのアイデアです。

――これまでのコンサートで歌唱されたり、演奏されたりした楽曲の中でお好きなものがあれば教えてください。

 PEANUTSに縁のあるクリスマスナンバーも要素として必要なので、過去に歌わせていただいた曲からは「Christmas time is here」や「Just like me」は好きな曲ですし、セットリストに入っています。

――今回の選曲でこだわったことがあればお聞かせください。

 クリスマスシーズンというテーマを共有した上で、どんな曲が聴きたいか、どんな曲であればオーケストレーションした時に盛り上がるかといった観点から議論を重ねました。

 中でもサザンオールスターズの「真夏の果実」はクリスマスアレンジでお届けしようと僕のアイデアで選曲しました。クリスマスシーズンを世界規模で考えた時に、南半球は夏の真っ只中であることから、視野を広げようという意味も込めて、この曲がふさわしいと思いました。

 多様性が求められている今、クリスマスって冬だけではない。いろんな考え方ができたほうが人生も豊かだよと、僕の中で考え抜いて思いついたことです。

 桑田佳祐さんが「僕もやりたいな(桑田さんの真似をしながら)」っておっしゃるかもしれない。歌う桑田佳祐さんの物真似は得意なんですが、しゃべる桑田さんは難しいですね。全然似てない(笑)。クリスマス風の「真夏の果実」、乞うご期待です。

2023.09.29(金)
文=山下シオン
撮影=平松市聖
衣装=橘省吾
ヘアメイク=岩田恵美
取材協力=Amazon Music Studio Tokyo