「屋根のない美術館」と呼ばれるフィレンツェには、中世のままの美しい街並みが残る。
レストランやショップは、伝統を大切にしつつ、進取の精神を忘れることはない。今こそフィレンツェへ。この街は、いつだって「今」が一番面白い!
時代を経ても決して色あせることのない、普遍的な美しさは存在するのだろうか? 古都フィレンツェは、その疑問に対する確固たる答えを与えてくれる。フィレンツェで今注目の4つの宮殿や大聖堂を4回に渡りご紹介。
外観からは想像できない煌びやかな礼拝堂
◆Palazzo Medici Riccardi(メディチ・リッカルディ宮)

メディチ家の私邸として、フィレンツェの中心地に位置するこのパラッツォが完成したのは、1459年とされる。建物の中核は、2階にある礼拝堂だ。

この部屋の正面、祭壇に掲げられている絵画は、フィリッポ・リッピがイエスの誕生を描写した《神秘の降誕》。

その画題を祝福するかのように礼拝堂の壁面を覆い尽くすのが、ベノッツォ・ゴッツォリが手がけた色彩豊かなフレスコ画の連作《ベツレヘムに向かう東方の三博士》である。
新約聖書の記述に則ったこの室内構成によって、二つの作品がダイナミックに呼応し、見事な調和を見せている。

なお、この壁画の一パート「若い王の行列」で白馬に乗っている人物は、ロレンツォ・デ・メディチがモデルだという。かなり美化されてはいるそうだが。
17世紀半ば、この館はメディチ家からリッカルディ家の手に渡った。

Palazzo Medici Riccardi(メディチ・リッカルディ宮)
所在地 Via Cavour 1, 50129 Firenze
電話番号 055 2760552
営業時間 9:00~19:00
休館日 水曜、12月25日
拝観料 7ユーロ(企画展開催時13ユーロ)
https://www.palazzomediciriccardi.it/
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Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2023.08.28(月)
文=下井草 秀
撮影=橋本 篤
CREA Traveller 2023 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。