風格ある伝統宿で心を肥やす

◆界 玉造[松江・玉造温泉]

 さて、出雲大社をはじめとした聖地巡礼のあとは、心満たされる次なる時間を満喫しに、玉湯川の畔で古くからのおもてなしの歴史を受け継ぐ界 玉造へ。

 こちらのコンセプトは「いにしえの湯と出雲文化を遊ぶ宿」。奈良時代に編纂された『出雲国風土記』に、一度入れば容姿端麗、再び入れば万病が治ると記された、日本最古の美肌湯を堪能できるだけでなく、城下町・松江の豊饒な文化にふれられるのが魅力の宿です。

 敷地内には美しい池庭が広がり、館内の太鼓橋は、昭和初期の建築。時を重ねた空間が独特の風格を醸し出します。そして、ぜひ楽しみたいのが、チェックイン後の歓迎のおもてなしとして用意される、茶室での茶の湯体験。

 会話も楽しい気さくな先生によるお点前で抹茶と和菓子を。堅苦しくなくリラックスした雰囲気での茶の湯は、茶人大名として知られる松江藩主・松平不昧(ふまい)公のお膝元であり、人々の暮らしのなかに茶道が根づいているこの地域ならではです。

 また、島根といえば日本酒発祥の地。ノドグロやシジミをはじめとした名産をふんだんに味わえる会席スタイルの夕食では、日本酒とのマリアージュを満喫できるほか、「日本酒BAR」には県下の蔵元の銘酒がずらりと並び、飲み比べも気軽に体験できます。

 さらに昨年生まれ変わった客室の温泉露天風呂で〈酒風呂〉を楽しむことも可能で、売店では入浴用の一合瓶を販売。大浴場で〈日本酒フェイスパック〉を試せるのもうれしいところ。

 加えて「界」といえば、見逃せないのが地域文化を独自のスタイルで堪能できるアクティビティ「ご当地楽」。界 出雲、界 玉造ともに島根を代表する郷土芸能・石見神楽(いわみかぐら)を無料で鑑賞することができます。地元神楽団の指導を受けたスタッフによる熱演に、圧倒されること間違いなし。

 界 出雲と界 玉造。異なる個性をもつこの2つの宿を〈巡泊〉すれば、島根の奥深い魅力に出会うことができるのです。

界 玉造

電話番号 050-3134-8092(界予約センター)
料金 1名38,000円~(1室2名利用、夕・朝食付き)
アクセス 出雲空港から車で約25分
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaitamatsukuri/

Column

CREA Traveller

文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。

2023.07.26(水)
文=矢野詔次郎
写真=鈴木七絵

CREA Traveller 2023 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

トスカーナとシチリアで 見つけた幸せの法則 Le splendide stelle d'Italia

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