介護という家の困りごとを家の中で解決できないのは、家庭内安全保障が成り立ってないことであり、要するに、家庭長として役割を果たしていないことになります。日本型福祉社会論が残した最大の負の遺産は、過剰な「自己責任論」でしょう。

――女性たちへの「自分でやらなくちゃ」という刷り込みから、自己責任論へ。

安藤 自民党が刷り込んだもっとも小さな単位は「個人」ではなく「イエ」。だから家の中で解決するのが「自助」で、それができなかったら地域、「共助」で解決しましょうと。で、最後によっこらしょと出てくるのが国という順番です。

 でも、この順序が残したのは、肥大化した「家で解決しなくちゃいけない」という自己責任論なんです。ヤングケアラーの問題も、ワンオペのお母さんが助けを求められないのも、全部根っこは同じ。だから、日本型福祉社会というのは罪深いんです。

「お局」「ニュースの女王」…40代になると、悪意ある報道が

――安藤さんも一時期は介護とキャリアを両立しながら40年以上、メディアの第一線で活躍されてきました。“女性キャスター”への扱いはこの間、変化しましたか。

安藤 30代を超えて40代になると、テレビは「ババア引っ込んでろ」の世界ですからね。週刊誌に「お局」とか「ニュースの女王」とか書かれたりしましたが、同年代の男性の同業者がそういったことを書かれるのは見たことがありませんよ。悪意のある見方はずっとつきまといましたし、そういうものを目にする度に傷つきました。

 

――女性がメディアに出ると、「美人すぎる市議」のような、キャリアとは無関係のキャッチコピーがつくことも多いです。

安藤 メディアに出る女性が若くてかわいくなくちゃ生き残れない風潮が根強いように、女性国会議員にも、容姿といった外側のことばかりを求めるきらいがありますね。

 そもそも、「女性が輝く」という政府のコピーもどうかと思います。「男性が輝く社会」なんて言わないわけでね。

2023.07.26(水)
文=小泉 なつみ