役者の心情を尊重してくれるのが庵野監督
また庵野さんは「声優さんは口パクに合わせる技術が素晴らしいのですが、そこは無視して自分の間でいいです」と、役者の心情を尊重してくれることが多いです。
TV版のように放送の尺がきっちり決まっている場合は難しいですが、劇場版などでは可能。キャラの表情も限定しないよう、あえて顔が見えない背中やオフの画にすることもあります。
そもそも声優は、出来上がった尺の口パクやブレスにピタリと合わせ、なおかつ気持ちを入れ込めてしまう特殊技術。そこに美徳を感じます。でも口パクという制限が外れることで、自由度が高まり、役者はそのときどきの感情に身を委ねていろんなお芝居ができる。
ただし、このやり方はなかなか終わりがなく、時間がかかってしまうのですが……。劇場アニメで3回も4回も呼ばれるなんて、『エヴァ』だけです。
でも、常識にとらわれない発想がたくさん詰まっていて、まさに唯一無二といえる、刺激的で革新的な現場でした。
2023.06.30(金)
文=三石琴乃