本来そこに善悪はないはずですが、本のなかに、アメリカのダン・クエール元副大統領が質問の論点を微妙にずらして、自分の言いたいことだけを答えるという例が出てきます。話している内容がおかしくても、会話のルールを守って、答えるタイミングや相槌みたいなもので気持ちよく会話を進めれば、様々なことがごまかせちゃう。
政治家から身近な人まで、いろいろな人が思い浮かぶと思いますけれど(笑)、ともかくそうやって、会話についての人間の性質を利用している人もいるのかもしれない。そういうことを知っておく、というのはこの本のひとつの大事な意味なんじゃないでしょうか」
夏目大(なつめ・だい)
翻訳家。『因果推論の科学』(ジューディア・パール、文藝春秋)、『ネットリンチで人生を破壊された人たち』(ジョン・ロンソン、光文社)、『デマの影響力』(シナン・アラル、ダイヤモンド社)、『南極探検とペンギン』(ロイド・スペンサー・デイヴィス、青土社)、『エルヴィス・コステロ自伝』(エルヴィス・コステロ、亜紀書房)、『タコの心身問題』(ピーター・ゴドフリー=スミス、みすず書房)ほか訳書多数。
2023.07.06(木)
聞き手=翻訳出版編集部