ワイングラスの王様、ロブマイヤーへ

日本のうすはりグラスを思わせる薄さ、繊細さが現在のロブマイヤーデザインの真骨頂。シックで上品なデザインはさすがのひとこと

 ハプスブルク家御用達の磁器ときたら、お次はやはりグラスでしょう。ウィーンに本店を構えるロブマイヤーは、言わずと知れた世界的ガラス工芸メーカー。1823年、ガラス細工職人だったヨーゼフ・ロブマイヤーがウィーンに開店した小さなガラス店は、その上質なクリスタル製品が評判を呼び、1835年にハプスブルク家から皇室御用達の称号を与えられました。以来、歴代のハプスブルク家の食卓を飾り続けてきたロブマイヤーのグラスの数々。とくに皇妃エリザベートは透明度が高く、繊細な美しさのあるロブマイヤーのクリスタルグラスを愛したと言われています。歴代の皇帝や皇妃を魅了したロブマイヤーの魅力とは、いったい何なのでしょう?

ハプスブルク家御用達のグラスといっても、歴代皇帝によってデザインはまちまち。エリザベート妃は装飾の少ないシックなデザインを好んだそう

 ロブマイヤーが店を構えるのは、ウィーンの目抜き通りともいわれるケルントナー通り。名店が軒を連ねる銀座のような土地柄ですが、そんな場所にあってもロブマイヤーは特別な輝きを放っています。解放感のある吹き抜けにしつらえられたクリスタルのシャンデリア。宝石のようにキラキラと光を反射する繊細なワイングラス……。美術館か! と突っ込みを入れたくなるような優雅な空間にしばしうっとりします(ちなみに、ロブマイヤーはシャンデリア製造でも右に出る者がないほどの名店。ウィーンのシェーンブルン宮殿のシャンデリアも、ロブマイヤーのものが使われています)。しかしながら、ここはれっきとした販売店。驚くなかれ、じつはロブマイヤー本店の2階には、本物の美術館があったのです!

ロブマイヤー本店の2階にある美術館スペース。歴代のロブマイヤーグラスがずらりで、ファンにはたまらない空間です

 吹き抜け横の階段を上ると、そこはもう「ロブマイヤー美術館」。創業から現在まで、時代とともにデザインを変えてきたロブマイヤーのグラスが一堂に会しているさまは圧巻の一言です。たとえばマリア・テレジアの名を冠するワイングラスは、ボウル部分が十数面にもカットされたゴージャスなデザイン。それに対して、エリザベートが愛用したと言われるグラスは、カッティングのないボウルに金のラインが控えめに入ったシックなデザインです。どちらもロブマイヤーならではの職人技とデザインが光る名品ですが、その背景には時代時代の文化や芸術の流れがあるように思えます。皇室御用達の名店とは、ウィーンの歴史を映す鏡のようなものなのかもしれません。

 またもやお土産情報でしめてしまいますが、ショップでは高級グラスのほか、オリジナルのテーブルウェアやリネン類など、お手頃価格の商品も豊富に揃います。内装のゴージャスさに一瞬ひるみそうになりますが、店員さんもとてもフレンドリーなので、ぜひ立ち寄ってみてください。

オーストリア航空
URL www.austrian.com

オーストリア政府観光局
URL www.austria.info/jp

ロブマイヤー
所在地 Kärntnerstraße 26, 1010 Vienna
電話番号 +43-1-512-0508
URL www.lobmeyr.at
営業時間 10:00~19:00(土曜日~18:00)
定休日 日曜日、祝日

小林百合子(こばやし ゆりこ)
フリーランス編集者。出版社勤務を経て独立。旅やアウトドア、自然にまつわる雑誌・書籍の編集を手がける。女性向け山岳雑誌『Hütte』(山と溪谷社)の編集を務め、女性らしい視点で登山の楽しみ方を提案している。著書に『山と山小屋』(平凡社)がある。

田部井朋見(たべい ともみ)
写真家。大学中退後、ファッション関係の出版社に入社。退社後、フリーランス。ファッションやレコード、CDジャケット、写真集などの仕事に携わり、海外取材も、60カ国を超える。特に、オーストリアは50回以上滞在。文と写真を手がけた著書に『ウィーンのカフェハウス』(東京書籍)がある。オーストリアのように、水道水の美味しい国が大好き。

Column

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2013.12.15(日)
小林百合子=取材・文
田部井朋見=写真