英国は、常時、国王または女王に、外交問題を含む詳細な報告をしている。首相が行うブリーフィングに加え、閣僚も同様で、情報機関のデリケートな報告もある。政治に介入せずとも、立憲君主は、国際情勢に精通するのが伝統だ。
それは、世界に向けた「言葉」に生かされ、時に歴史を動かしてきた。
浩宮を、トップ・シークレットの部屋へ招いたのは、誰の発案だったか。首相、あるいは外務大臣、それとも、エリザベス女王だったか。いずれにせよ、将来、祖父や父の後を継いで天皇になる浩宮への、無言のメッセージのようだった。
そして令和を迎え、世界は、昭和初期のようなきな臭さを増している。東西冷戦中は押さえられたナショナリズムが燃え、独裁的な指導者が登場した。米国、中国、ロシアの覇権争いで、新たな大規模戦争の恐れも囁かれる。それは、ロシアのウクライナ侵攻で現実になった。
もし一触即発になっても、日本国の象徴たる天皇が、事態を的確に読み、必要とあればメッセージを発する。それには、インテリジェンスが不可欠だ。
この意味で、今上天皇のオックスフォード留学は、令和の今こそ、大きな意味を持つと言える。
2023.06.21(水)
文=徳本 栄一郎