知られざる雅子さまのこだわり

 特別展の会場でローブ・デコルテの反対側に展示されているのが、婚約内定記者会見でお召しになったイエローのドレスだ。見どころは、共布でつくられた帽子とバッグ。実はこの帽子を後ろから見ると、2輪の小さなバラが。バッグには小粒のパールがあしらわれていて、知られざる雅子さまのこだわりが垣間見られた。

 特別展をご覧になった愛子さまは、プロポーズの言葉を陛下に「再現して」とおっしゃる場面もあったという。

 雅子さまは皇室に入られた90年代前半によくイエローのお召し物を選ばれていた。1994年11月にオマーンを訪問された際には珍しくイエローのパンタロンスーツをお召しになっていて、おしゃれな装いだ。

 陛下の即位後初めての一般参賀でもカナリアイエローを選ばれ、「新しいこと」を前にされた時に雅子さまがお選びになる色なのかもしれない。

 

29歳半のスタートを切る2着

 雅子さまは2022年12月のお誕生日に際してのご感想で、「今回、50代最後の誕生日を迎えるに当たり振り返ってみますと、私が、当時の皇太子殿下との結婚により皇室に入りましたのが平成5年6月9日、ちょうど29歳半の時でした。本日の誕生日で、その時からちょうど29年半になります。いつの間にか人生のちょうど半分ほどを皇室で過ごしてきたことに、感慨を覚えております」と述べられている。

 今回の展示であのドレスが選ばれたのは、雅子さまにとって、それまで過ごされた一般社会とは違う世界で生きていく29歳半のスタートを切る2着だったからだとも読み解けるように思う。ローブ・デコルテとイエロードレスの共通点を考えてみると、どちらもスカート部分がふくらみすぎず、全身のシルエットを見るとストレートなIラインの雰囲気を演出しているところではないだろうか。かわいらしさに重きを置くのではなく、凛とした雅子さまらしいキャリアウーマン風のテイストが生きているように思った。

2023.06.14(水)
文=佐藤あさ子