この記事の連載

 予約が取れない人気講座「植物観察会」を開催する鈴木純さん。会の内容を漫画でまとめた著書『まちなか植物観察のススメ』が好評です。鈴木さんが植物観察家になった理由や、目指す未来についてお聞きしました。

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──鈴木さんの肩書きは「植物観察家」です。「研究家」や「ガイド」ではなく「観察家」と名乗るのはなぜですか?

鈴木純さん(以下、鈴木) この肩書きはNHK『趣味の園芸』の編集長をしていた方に名付けていただいたんです。ぼくがつけたわけではないので、偉そうなことはいえないのですが、フリーランスで植物の楽しさをみなさんに伝える仕事をしていると「山野草研究家」などを名乗る方にお会いするも多いんですよ。でもぼくは、自分が研究をしているとは思っていないので、自分が「研究家」と名乗ることには違和感がありました。

 それにぼくは、自分の感性や主観で植物をただ観察して楽しんでほしいという思いで観察会を開いているので、「ガイド」というのも違うなと思って……。参加者のみなさんと同じ目線で植物を「観察」する。だから、「植物観察家」。ぴったりの肩書きをつけていただいたと、とても気に入っています。

──いま、日本の植物学の父といわれる牧野富太郎さんをモデルにしたドラマが放送されていますが、鈴木さんも牧野さんのように子どもの頃から植物がお好きだったのですか?

鈴木 休みの日に両親がよく海や山に連れて行ってくれたので、普通に自然好きでしたが、誰よりも植物への情熱を持っていたとか、特別に詳しかったということはなかったです。学校の先生になりたかったので、将来はなんとなく植物にも関われそうな理科の先生になれたらいいな、くらいにぼんやり考えていただけでした。

 大学についても、東京農業大学に進学したのは教員免許が取れて植物についても学べるからで、最終的に造園科学科しか受からなかったのでそこに決めたというだけなんです。ものすごい熱意を持って入学したわけではないんですよね……。

──いつ頃からフリーランスの「植物観察家」になろうと思われたのですか?

鈴木 これも積極的に目指していたわけではなく、気がついたらなっていた、という感じです。

 ぼくは大学を卒業してから2年間青年海外協力隊に参加し、帰国して新和ツーリストという会社に入社しました。そこでフラワーウォッチング専門のツアー添乗員として7年間働いていたのですが、これが大学の先生や、プロ級の知識を持つアマチュアの方なども参加するような専門性の高いツアーで……。外部から植物の専門家を講師として招き、日本中の花を見てまわるツアーだったので、大学の4年間と、会社員のこの7年間で、フィールドでの実体験をとにかくたくさん積むことができました。

2023.06.01(木)
文=相澤洋美